進歩遂げるがんの放射線治療
副作用は大幅に軽減(東京都立駒込病院放射線診療科 唐澤克之部長)
手術、薬物治療と並ぶがんの治療の3本柱の一つである放射線治療。近年、技術が進歩し、放射線の治療効果は格段に向上している。がん・感染症センター東京都立駒込病院(東京都文京区)放射線診療科の唐澤克之部長に聞いた。
従来の放射線治療とIMRTの違い
▽技術革新で精度が向上
放射線治療は病巣部に放射線を照射してがんを死滅させる治療法だ。放射線を体の外から当てる(外部照射)、または中から当てる(内部照射)という二つの方法がある。内部照射の中には、放射性物質を含む薬剤を投与する内用療法もある。
国内で普及しているのは外部照射で、治療全体の95%を占める。治療用放射線には、X線、ガンマ線、粒子線などがある。
「ほとんどのがんでX線治療が用いられています。ガンマ線は主にガンマナイフ(開頭手術を行わずに脳内の病変を治療できる装置)として脳腫瘍や脳転移のあるがん、粒子線は小児腫瘍、頭頸部の扁平(へんぺい)上皮がん以外の腫瘍、前立腺がん、そして筋肉や脂肪組織に腫瘍ができる肉腫などに用いられます」と唐澤部長は説明する。一方、内部照射は前立腺がんや子宮がんなど、内用療法は甲状腺がんや骨転移などの治療で行われる。
近年、技術の開発が進み、コンピューターの精密な操作により高い精度の放射線治療が可能になっている。「X線を用いた強度変調放射線治療(IMRT)は、がんの形に合わせて多方向から放射線の強さを調整しながら、高い線量をがん細胞に集中して照射できます。治療後にひどい副作用で悩む人は減っています」
▽手術せずに済むケースも
放射線治療の有効性が向上したことで、手術が不要になるケースも増えている。早期の前立腺がんでは、放射線治療のみで根治が期待できる例が多く、病巣が小さい肺がんでは手術と同等の治療成績を上げているという。さらに、頭頸部がん、食道がん、膵臓(すいぞう)がん、ぼうこうがんなどでは、放射線治療と抗がん剤を併用して、治療できる人が増えている。
また、免疫細胞の働きを高めてがん細胞を攻撃する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と併用すると効果が得られやすくなるため、新たな治療法として注目されている。
放射線治療は、手術できない、または手術に抵抗がある人に有益な場合がある。手術が必要か否かは個々の患者で異なるが、「治療に迷ったら、放射線治療の専門医(放射線腫瘍医)にセカンドオピニオンを求めるのもよいでしょう」と唐澤部長はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/06/05 05:00)
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