教えて!けいゆう先生
風邪は病院に行くべき?
早めの受診にメリットがない理由
「点滴してもらえばいい。点滴をしてもらったら風邪はきっと早く治る!」と思った方がいるかもしれません。残念ながら、外来で行う一般的な点滴の成分は、ほぼ水です。水にナトリウムやカリウムなどの電解質が含まれており、成分としてはスポーツ飲料と似ています。風邪を治す成分はもちろん含まれていません。
点滴の目的は、のどの痛みや全身倦怠(けんたい)感によって、食事や水分がとれずに脱水状態になっている時の水分補給です。口から自力で水分がとれる方には、点滴を行う意味はあまりありません。
◇うがい薬をもらいたい
「病院でもらえるうがい薬を使ったらのどの痛みがなくなったことがある。うがい薬を処方してほしい!」と思った方がいるかもしれません。消毒作用があるうがい薬は、水道水でのうがいに比べて風邪の予防効果が乏しいことが過去の研究で明らかになっています(*)。風邪の治療法として考えても、あえて水道水の代わりにうがい薬の使用を勧める理由はありません。
したがって私たちは、特別な理由がある場合を除き安易にうがい薬を処方しなくなっています。
◇病院に行く意味はない?
以上のことを考えると、風邪で早めに受診しても、実は「病院でしかできないこと」がほとんどない、ということが分かります。風邪は自然に治る病気ですので、受診にかかる時間と労力を考えると、その時間を使って自宅でゆっくり療養する方が有効です。
ただし注意したいのは、ここに書いた内容は、「早めに治したい」という動機で病院によくやってくる、比較的若くて元気な人の「いつもの風邪」という場合だということです。
感染症に対して抵抗力の低い3カ月未満の赤ちゃんや、持病などによりさまざまなリスクを持つ方は、風邪を契機に他の重篤な感染症を合併することもありますし、「風邪に症状が似ているがただの風邪ではない」というケースもあります。
ここに書いた内容が全ての人に適用できるわけではない、という点はご注意いただきたいと思います。(医師・山本健人)
(*)参考文献
Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: a randomized trial. Am J Prev Med 2005; 29: 302-307
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(2019/04/19 06:00)