インタビュー

子宮頸がんと副反応、埋もれた調査
「名古屋スタディ」監修教授に聞く

 オッズ比は1近辺

 三つ目は、調査結果のデータをすべて公開することです。調査を行って、どんな結果が出ても、その結果をいいと思う人がいる半面、よくないと思う人がいる。私が好き勝手に結果を導き出しているのではないということが、誰の目にもわかるように、必ずデータを公表して、みんなが見られる形にしてくださいと要望しました。

 これら三つの条件がすべて受け入れられたので、調査をお引き受けすることにしました。

オッズ比について説明する鈴木貞夫教授

 ---具体的にどのような方法で実施したのですか。

 名古屋市に住民票のある女性のうち、1994年4月2日~2001年4月1日生まれの7学年全員にアンケート調査票を郵送し、ハガキで回答してもらう形にしました。私の方ではどんな症状が出ているのかわかりませんから、患者会から提示された24症状をすべて使ってアンケートを作成。郵送、回収、入力作業は名古屋市が行い、届けられたデータを解析しました。

 研究室で「7万件出して、3万件返ってきたら、すごいよね」と話していたら、本当に約3万人の回答があった。調査実施にあたって河村市長が記者会見をしたり、地下鉄の車両の中の電光ニュースを流したりして積極的にピーアールした結果だと思います。

 ---どんな結果が出ると予想していましたか。

 因果関係を示すオッズ比(相対危険度)を示すのが研究の目的でもあり、その具体的な数値が私たちの一大関心事でした。従って、それがいくつになるかということについては全く予期できませんでした。薬害だと判断するならば、オッズ比が相当大きい数字になるはずです。過去に起きた薬害事件でも、サリドマイドのオッズ比は100を超えましたし、薬害エイズは理論上無限大になります。

 ところが結果のオッズ比は低かった。ワクチン接種と症状の両方ある人が積極的にアンケートを返してくるはずなので、結果は関連が出やすい方向に向かうはずでした。いずれにせよ、非常に高いオッズ比が観察されたら接種と症状との関連は否定できません。しかし、実際は極めて低いオッズ比が出た。一般的にオッズ比が2を下回るような数字で薬害と判断するのは無理があります。

 ◇苦しむ人へのケア必要

 ---疫学的因果関係、オッズ比をどう受け止めたらよいですか。

 たとえば、結核と結核菌の関係をみると、結核菌以外のことが原因で結核になることはありませんから、オッズ比は無限大になります。一方、喫煙と肺がんの関係でみると、たばこを吸わない人でも肺がんにかかるけれども、喫煙者の方がより多くかかる。たばことの関連あり、なしをどのように分けるかという場合に使うのがオッズ比です。

疫学的な因果関係について説明する鈴木貞夫教授

 喫煙と肺がんの関係をめぐるオッズ比は、肺がん患者における喫煙者と非喫煙者の割合、健康な人における喫煙者と非喫煙者の割合を比較して算出します。関連がなければオッズ比は1。関連が強いほど数字が大きくなる。つまり、医学的な関連があったということになります。

 ---どんなに頻度が少なくても、実際にさまざまな症状に苦しむ人の姿をTVなどで繰り返し目にしているので、不安に感じる人が多いのではないでしょうか。

 たしかに映像はインパクトが強いですから、ワクチンを打ったら自分もそうなってしまうのではないかと不安に感じると思います。メディアの影響力は大きいですから。ただ、メディアは症状で苦しんでいる人がいるということを伝えたけれども、HPVワクチンとの因果関係が解明されたとは伝えていない。名古屋スタディで因果関係を積極的に支持するものは一つもないことがわかった。

 ですから、さまざまな症状の原因をHPVワクチンだけに求めるのは無理がある。他の可能性についても考えていかないと危険だと思います。原因が何にせよ、苦しんでいる人たちへのケアは必要ですし、無過失補償はすべきだと思います。

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