がん手術後に出現するむくみ―リンパ浮腫
発症や進行を防ぐポイントは
がんの手術で腫瘍の周囲にあるリンパ節を切除したり、放射線治療を受けたりすると、手や腕、脚などにむくみが生じることがある。これを「リンパ浮腫」と呼ぶが、その症状や予防のポイントについて、がん研究会有明病院(東京都江東区)婦人科の宇津木久仁子副部長に聞いた。
▽術後1年以内にむくみ
リンパ節は、リンパ管(体の組織に栄養分を送り、老廃物を回収するリンパ液の通り道)の途中にある関所のようなもので、首の付け根や脚の付け根、脇の下に多く見られる。乳がん、子宮がん、前立腺がん、ぼうこうがんなどの手術でリンパ節を切除した場合にリンパ液の流れが滞り、リンパ浮腫が起こりやすくなる。手術に加えて放射線治療を受けた人は、そのリスクが高まる。
リンパ浮腫を予防するために心掛けたいこと
宇津木副部長は「発症時期や症状の程度には個人差があります。症状が全く出ない人もいれば、手術から5~10年後に発症する人もいますが、多くは術後1年以内に出現します」と説明する。
▽早期発見・治療で重症化を防ぐ
リンパ浮腫になると、リンパ液の流れが悪くなるため、細菌が入ると排除できず、菌が繁殖して、腕や脚全体に炎症が起こる蜂窩織炎(ほうかしきえん)を合併することがある。「術後は、リンパ浮腫の発症や悪化のきっかけとなる炎症を予防するため、皮膚を清潔に保つ、乾燥を防ぐ、傷つけないようにするなど、スキンケアなどに努めましょう」と宇津木副部長。
治療には、浮腫部分の圧迫療法を基本に、圧迫下での運動、専門家によるリンパの流れを促進するためのマッサージ(リンパドレナージ)などを組み合わせる方法がある。リンパ管が閉塞(へいそく)を起こしている場合は、リンパ管と静脈をつないでリンパ液の流れを改善する外科手術を行う方法もある。
宇津木副部長は「リンパ浮腫を放置すると、皮膚の線維化が進んで象皮症になることがあります。重症化するほど治りが遅くなるため、悪化を防ぐために、早めに手を打つことが大切です」と強調する。腕や脚の太さに左右差が表れた場合などには浮腫を疑い、早めに受診してほしい。
リンパ浮腫の治療は、医療機関によって保険診療で受けられる所もあれば、自由診療で対応している所もある。「通院している病院で治療が難しい場合には、主治医に治療ができる医療機関を紹介してもらったり、看護師に相談してもよいでしょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/07/14 08:00)