特集

乳がんと「共生」の時代
治療に経済支援の拡充を

乳がんを再発後もNPO副理事長などとして活躍する米村好美さん

 ◇がんきっかけに管理栄養士

 この日のセミナーには、52歳で乳がんを再発、転移がみつかったものの、今は乳がん患者を支援するNPOの副理事長も務める米村好美さんが参加。米村さんは「再発時は死が頭に浮かんだ。ショックで真っ白になったが、がんになったのをきっかけに、やり残したことはなかったか考えるようになった。これがプラスだった。大きな転機になり、専門学校に通い管理栄養士の免許を退職後に取った」と振り返る。

 米村さんは再発後10年以上が経過したが、今も社会で活躍を続けている。治療を初めた当時に関しては、「公務員待遇の会社で働いていたため上司にがんを説明し、治療に協力いただいた。金銭的にも互助会があり、恵まれた会社で勤め上げられた」と語るが、多くの患者は再発や死の恐怖だけでなく、生活の不安を抱えるケースも少なくない。

 ◇「会社のサポートがない」

 乳がんは20~30代で子どもが小さい女性にも起きる。

 診察室の外で乳がんの患者と向き合うことも多い同病院看護部副看護師長の鈴木美智子さんは、「派遣など非正規の患者さんの多くは『会社のサポートがない』と言われる。再発を会社に説明できず、説明すれば契約が終了になってしまう。仕事を続けられない患者が多い」という現場の実情を明かした。

 さらに、「実際に費用がどれくらいかかるか聴かれる患者が多い。『1回これくらい』と説明すると、金銭的に治療を続けられず、諦める患者もいる」とした。

がん研究会有明病院乳腺センターの原文堅乳腺内科医長

 ◇1000万円を超える場合も

 米村さんは乳がん再発後、抗がん剤治療を2週に1回受け、自己負担は月10万円かかった。高額療養費制度により、月10万円が最高額だったが、決して少ない額ではない。大野氏は「新薬が出てきて患者負担は月10万円、年額だと120万円になる。(治療期間が)5年、10年となると、500万円、1000万円という額になる」と指摘した。

 原氏は、医療負担に悩む患者をしばしば診察している。「(ある患者は)ご自身ですべての家計を支えていたが、非正規の職を失った。私はベストな治療を提示し、『高額療養費制度の範疇(はんちゅう)です』と伝えたが、『私はそれは受けられない』と言って安い治療を選択した。その医療費を無理してなんとか工面していたが、ある日、『治療費がないので治療をやめたい』と言われた」と話す。

 こうした場合は、生活保護制度(標準治療は無料)をソーシャルワーカーを通じて説明する場合もある。原氏は「薬剤の進歩は喜ばしいが、価格上昇によって医療が均等でない状況があります」と現状を語った。(解説委員・舟橋良治)

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