研究・論文

全身の筋力が徐々に低下―筋ジストロフィー
進む治療薬の開発

 筋ジストロフィーとは、全身の筋力が少しずつ低下していくという共通の症状を持つさまざまな病気の総称で、国の指定難病だ。国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)トランスレーショナル・メディカルセンター長の小牧宏文医師は「難病というとつらい闘病生活のイメージがあるかもしれませんが、以前と比べると状況はかなり改善されてきています。進行は緩やかで、患者さんは日々の生活を楽しみながら過ごしています。頑張って勉強して大学に進学する子もいます」と話す。

転びやすいなどの症状に親が気付き、受診するケースも

転びやすいなどの症状に親が気付き、受診するケースも

 ▽寿命はより長く

 筋ジストロフィーは10万人に17~20人程度がかかるごくまれな病気だ。50種類近くのタイプがあり、発症年齢も症状の進行度合いも異なる。

 代表的な病気の一つが、4歳前後の男児に発症することの多い「デュシェンヌ型」だ。転びやすい、走れない、スムーズに立ち上がれないなどの症状に親が気付いて受診する。他の病気のために受けた血液検査で血清クレアチンキナーゼという酵素の値が高いことから、発症前に偶然見つかるケースもある。

 全身の筋力が低下するため、運動機能だけでなく、呼吸機能やかんで飲み込む機能、心筋の障害など、影響は内臓にまで及ぶ。何も治療しなければ10歳未満で歩行不能になり、10代後半で呼吸不全に至ることが多い。しかし、ステロイド治療で進行を緩やかにすることができるようになり、人工呼吸器を使うことによって呼吸不全で死亡する患者は少なくなった。

 運動機能も、早期からリハビリに取り組むことで低下を抑えることが期待できる。「数十年前には呼吸不全のため10代で亡くなる方が多かったのですが、寿命は大幅に延びています。経過をよく観察して、症状が進む前に先回りして治療することが大切です」と小牧医師は強調する。

 ▽新薬の早期承認に期待

 筋ジストロフィーの原因は、遺伝子の変異だ。親から引き継がれることもあるが、突然変異で生じる場合もある。遺伝子治療やゲノム編集など多方面から治療法の開発が進められており、遺伝子変異による影響を軽減させる治療薬が近い将来承認される可能性があるという。

 「希少疾患は患者数が少ないなどの理由から、治療薬の開発が難しい場合が多いのですが、できるだけ多数の患者に登録してもらい症例データを集めるといった工夫で、早期に承認され使用できるよう取り組んでいます」と小牧医師。さらなる治療法の進歩が期待される。(メディカルトリビューン=時事)


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