Dr.純子のメディカルサロン

インフルエンザのリスクを低下させる三つの習慣 第39回

 インフルエンザの流行が懸念されています。北海道では積雪も始まり、日本列島はこれから本格的な冬を迎え、日照時間も減少します。

冬は何かと日に当たる機会も減りがち。天気のよい日はなるべく外へ出る習慣も大切【EPA時事】(写真はイメージです)

冬は何かと日に当たる機会も減りがち。天気のよい日はなるべく外へ出る習慣も大切【EPA時事】(写真はイメージです)

 寒いと、どうしても部屋にこもりがち。そうした環境が、インフルエンザ感染のリスクを上昇させます。

 予防接種や手洗い、マスク、せき・くしゃみマナーのほかに、日常生活で簡単にできる効果的なインフルエンザ予防法を三つ、ご紹介します。

 ◆ビタミンDが重要

 ビタミンDは、気道粘膜に作用して、ディエンシンというタンパクを分泌させます。これが天然の抗インフルエンザ薬として作用し、インフルエンザウイルスの気道粘膜への感染を防ぐとされています。

 ビタミンDの血中濃度が下がると、ディエンシン分泌が低下し、インフルエンザウイルスの感染を許してしまうのです。

 ビタミンDは、皮膚が太陽の紫外線を受けることで皮下脂肪から合成されます。ですから、日に当たる機会が少ないと、合成することができず、血中濃度は低下します。

 冬場、戸外に出る機会が減ったり、日照時間が短くなったりで、血液中のビタミンD濃度は低下しやすくなります。

 ◆昼食時は戸外へ

 長袖の服を着て、日焼け止めを塗ることで、冬場、血液中のビタミンDは、夏場の半分に低下するといわれます。こうした血液中のビタミンD低下が、インフルエンザにかかるリスクを高めてしまうといえそうです。

 1日のうち、紫外線量が一番多いとされるお昼に、戸外に出るなどしてはいかがでしょう。お弁当を買いに外に出る、ランチを外に食べに行くなど、昼休み、部屋に閉じこもらず、戸外に出る機会をつくるのがお勧めです。

 とにかく、冬場は日差しを浴びてほしいと思います。上気道感染の予防にビタミンDが有効という臨床研究報告もありますから、冬場の日光浴はインフルエンザ予防のポイントといえそうです。

 ◆小まめに部屋を換気

 企業の総務の方などがオフィスでインフルエンザ予防対策をする場合、大事なのは、換気の大切さを社内に伝えることです。

 特に、一つの大きな部屋で、机を並べて仕事をしているような環境ですと、集団感染が起こりやすくなります。

写真はイメージです【時事通信社】

写真はイメージです【時事通信社】

 寒くなると、窓を閉め切ることが多いと思いますが、時々、空気を入れ替えることが大切です。産業医として職場巡視をしていると、部屋の中に入った途端、空気がよどんでいることが分かるときがあります。こうした環境は非常にリスクが高いのです。


 ◆人にうつしそうなら休む

 自分の体調に違和感が起きた場合や、家族がインフルエンザにかかって、自分も何か変だと感じたときは、早退したり、自宅での仕事に切り替えるなどの対策が大事な感染予防になります。

 というのは、インフルエンザは発症1日前くらいから感染力があるといわれているからです。

 不顕性感染といって、熱が高くならないインフルエンザもあります。明らかに症状が出て、熱が出る前に、すでに感染力があるわけですから、このことを知ってほしいと思います。

 「体調が悪くても、頑張って職場に来るのがいい」「熱くらいで休むな」という風潮の企業。こういう企業は、最近は少なくなったと思います。それでも、先日の台風や大雨の時にも、出社しないといけないような意識がまだまだ残っていて、残念です。

 社内全体で「人にうつすリスクがあるときは休む」のが常識といった雰囲気づくりと理解が必要かと思います。

(文 海原純子)


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