医学生のフィールド

【医学生インタビュー】
新専門医制度ってどうなってるの?
日本専門医機構の寺本民生理事長に聞く・前編

 ◇診療科の選択は将来をよく考えて

 ―最近、学生の間では眼科や皮膚科が人気で、実際に志望者も増えてきていると聞きます。理由として、例えば循環器内科の場合、内科のスペシャルティを取ってから循環器内科のサブスペシャルティを取るので、労力も時間もかかる。それが眼科や皮膚科であれば、初期研修の2年後にすぐに研修に入れる。学生目線でいうと、すぐに専門医になれるというのがスペシャルティを選ぶに当たっての大きなポイントにもなると思うのですが。

 寺本先生 国家資格は医師以外にも、歯科医や弁護士もありますよね。例えば歯科医が増え過ぎて、実際に開業医の歯科医の過当競争が非常に激しい状態になってきています。

 弁護士も同じで、法科大学院ができた時、弁護士が一気に増えて問題になりました。医師にも同じことが起こり得ます。医師不足のことばかり問題視されていますが、一部の診療科に医師が集中することで、その専門医が需要を超える可能性もあるのです。

 現在、国の対策として、診療科ごとに必要とする医師数を算出しています。医師が一部の診療科や地域に集中しないよう、枠を決めて、偏在を防ぐよう専門医研修を通して慎重に行っています。

 確かに、心臓血管外科のような、資格を取得して更新を継続するために、何十症例もの手術を主担当で行わなければならないという義務が課される診療科もあります。

 このような専門性の高い診療科は専門医の数が絞られますので、ニーズも高まります。簡単に取れるからといって、安易な考えで診療科を選ぶと、将来的にどうなるかをよく考えた上で選択してもらいたいと思います。

 内科の場合、領域はとても広いので、内科専門医を取ってから循環器や消化器を勉強すると時間がかかります。動脈硬化性の患者さんが糖尿病を患っていた場合、専門外だからといって全く手が出せないというのでは診療に責任が持てません。時間がかかっても基本的なスキルを磨くというのはたいへん重要だと思います。

 ◇内科と外科は「連動研修」も可能

 ―基本領域の診療科とサブスペシャルティの研修を同時並行で行うこともできるのでしょうか。

 寺本先生 内科と外科については連動研修が登録できます。 内科でいうと「J―OSLER」、外科には「NCD」という研修実績の登録と評価ができるシステムがあります。

 例えば外科の基本領域の中で、胃がんのオペがあったり、膵臓(すいぞう)がんのオペがあったりした場合、消化器外科のサブスペシャルティの単位として登録することでカウントされます。

 内科の基本領域の場合も、J―OSLER上で、循環器の指導医に付いた時の症例に関しては、循環器のサブスペシャルティの研修の単位でカウントできるルールを作りました。「自分はこういう患者さんを、この指導医の下で、これだけ診ました」という症例を登録システムの中に入力して積み重ねていくのです。

 内科と外科はこのような登録システムが採用されたので、連動研修が可能となりました。

 ◆寺本 民生氏(てらもと・たみお) 1973年東京大学医学部卒。脂質異常症や動脈硬化糖尿病などの生活習慣病全般の診療に携わり、現在、帝京大学臨床研究センター長。2018年7月に日本専門医機構理事長に就任した。

 13年に開業した寺本内科歯科クリニックでは、「LSM(ライフ・スタイル・モディフィケーション)=生活習慣の改善」という理念を掲げ、内科と歯科の連携による診療に当たっている。

 ◆明日の教室 慶応義塾大学医学部学生の有志が企画するキャリア教育のプロジェクト。「参加者の誰かの人生を変えてしまうようなパワーを持った講師」を招き、定期的に講演会を行っている。(了)


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