特集

オンライン診療、本格普及へ 
新型コロナで変わる中国の医療【下】

 ◇患者は利用を避けられず

 政府の後押しがあるオンライン診療は、患者にも大きな意味を持ちます。通院のための外出自体が新型コロナ感染のリスクを高める上、患者であふれた病院が外来診療をほぼ停止していたため、オンラインによる診療を利用せざるを得ない、という面もありました。

QRコードを上海市全域での通行証明とする通知(上海市人民政府ウエブサイトより)

 診療に加えて健康管理でもオンライン化が急速に進んでいます。アプリによる健康管理が、その代表例です、上海市政府は3月1日付で「QRコードを公共の場所への通行証とする」「今後、QRコードによる健康状態確認を江蘇・浙江・安徽で共用の仕組みとして整える」という方針を公式に示しました。

 「アプリに健康状態を登録しておかねば行動が大幅に制限されるリスクがある」というメッセージです。

 ◇一過性のブームではない

 中国政府は、こうしたオンライン化の流れを一過性のブームではなく、中長期にわたって定着させる意図があるようです。

 3月20日付新浪財経ニュースによると、国家衛生健康委員会の企画・IT化部門(規劃発展与信息化司)トップ、王群安氏は記者会見で、「新型コロナ感染症の流行期において、オンライン診療は医療サービスの重要な要素である」と強調。その上で、「直近の成功事例や現行の政策をさらに定着させ、オンラインでのメディカル・ヘルスケアサービスを推進していく」と語っています。

 ◇「ポスト・コロナ」

 これまで患者と医療機関との関係は「病気になったら病院に行く」という形に、ほぼ限られていました。今回、新型コロナによって「病気になったが、病院に行けないときはオンライン診療を受ける」という新たな選択肢が確立されたと言えます。

中国の病院で、隔離区画に搬送される新型コロナウイルス感染者(2020年02月06日 湖北省武漢市)【EPA=時事】

 今後、アプリによる健康状態の登録・管理を含めたオンラインでの医療サービスがさらに定着していくと、オンライン・プラットフォームを「かかりつけ医」のように使い、必要に応じて病院に行く、という流れが想定されます。

 病院で急性期の治療を受けた後にオンラインで経過観察や処方を継続する、という方法もあるでしょう。

 「実体病院か、それともネット病院か」という二者択一ではなく、その時々で最も効率的な医療サービスが選択できるようになる。そんな未来を予感させるものです。

 新型コロナの感染拡大を機にオンライン・プラットフォームが存在感を増した事実は、そうした医療サービスの本格的な普及に向けた第一歩と理解できるのではないでしょうか。(萬 健治郎)

萬健治郎氏


萬 健治郎(よろず・けんじろう)
株式会社コーポレイトディレクション 副査
東京大学教養学部卒。日系医療機関(中国事業担当)、日系CRO(中国企業向け営業部隊立ち上げのための北京駐在)を経て、株式会社コーポレイトディレクションに参画
「中国×ヘルスケア」をキーワードに、日系の製薬会社・医療機器/医療材料メーカー・周辺システムメーカー等による中国市場参入支援、および中国戦略の(再)構築とその実行支援に従事してきた。
yorozu@cdi-japan.co.jp


◇新型コロナで変わる中国の医療【上】~勢い増すAI ロボット オンライン診療~





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