治療・予防

皮膚の張りの低下や乾燥に注意
高齢者の「スキンフレイル」(淑徳大学看護栄養学部 飯坂真司准教授)

 高齢者の皮膚は乾燥して張りや潤いを失い、外からの刺激に弱くなっている。脆弱(ぜいじゃく)な皮膚は、わずかな力が外から加わっただけでも裂けて、傷ができてしまう。近年、加齢に伴い皮膚の脆弱性が高まった状態を「スキンフレイル」と呼び、積極的に対処していこうとする動きがある。スキンフレイルの自己チェックリストを作成した、淑徳大学看護栄養学部(千葉市)の飯坂真司准教授に話を聞いた。

スキンフレイルの自己チェックリスト

スキンフレイルの自己チェックリスト

 ▽皮膚が傷つきやすい

 加齢とともに、皮膚は乾燥し、コラーゲンなどの密度が低下して、薄くなり、弾力性が失われる。また食事の量が減ったり、質素になり過ぎたりすると、タンパク質やビタミンなど皮膚の健康維持に必要な栄養素が不足する恐れもある。全身の筋肉量や体力も落ちる。これらの要因が重なって、皮膚の脆弱性が高まった状態がスキンフレイルだ。

 スキンフレイルでは、乾燥によって背中や腰回りなどにかゆみが表れ、睡眠を妨げて生活の質を低下させる。弾力性低下によって、体をどこかに軽くぶつけたり、体位を変えようと家族が手足を握ったりしただけでも皮膚が傷つくことがあり、傷が治るまでに時間もかかる。

 そこで、スキンフレイルを早期に発見して積極的に対処し、皮膚の損傷を防いで健康的な生活を送ろうという考え方が出てきている。

 ▽10項目のチェックリスト

 飯坂准教授は、皮膚の張りの低下を表す4項目、乾燥に関する6項目をチェックするリストを作成した。スキンフレイルのおおよその目安として、張りの低下で1個以上、乾燥で3個以上該当すれば、注意が必要だという。

 対策として、▽乾燥した皮膚に保湿剤を使う▽入浴時は、タオルなどで皮膚をごしごしこするのは避け、せっけんの泡で優しく包むように洗う――などを行う。飯坂准教授は「保湿剤は風呂上がりに塗るのが好ましく、塗った後の皮膚がテカテカするくらいの十分な量を使ってほしい」と話す。ローション(乳液)タイプなら全身にも塗りやすいという。

 同時に体内からの改善も大切だ。食事の際には、タンパク質を十分に摂取し、野菜や果物から抗酸化ビタミン(C、E)を取るよう意識する。飯坂准教授は「タンパク質の摂取量は体重1キログラム当たり1日1グラム以上、総カロリーの15~20%が目標です」と説明する。その上で「男女を問わず、元気なうちから皮膚に関心を持ち、気になることがあれば、医師や看護師に相談しましょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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