ヘルスコミュニケーションDr.純子のメディカルサロン

SNS、離れていても心の活気を維持するには 錦谷まりこ・九州大学病院メディカルインフォメーションセンター特任准教授に聞く

 ◆「つながり」で安心感

 海原 現在のようなコロナ禍で、なかなか里帰りできなかったり、高齢者がいて帰るのを控えたりする家族の場合、QOLを高めるには、SNSをどう活用すれば効果的ですか。
 
 錦谷 この研究で協力してくれた対象者の人たちは皆、遠距離家族を持っているため、広く情報発信するSNSだけではなく、いろいろなICTツールを主に家族間のコミュニケーションに利用しています。そこで、こうしたICTツールに焦点を当て、その種類や使用頻度を調べたところ、ICTツールの利活用の状況によって、心の状態に違いが出ました。

 個人的な経験からも言えますが、遠く離れた家族や友人と、ちょっとメッセージをやり取りするだけでも、あるいは、SNSで投稿された近況を見るだけでも、ホッとします。高齢の家族がいる場合だと、いつもは電話で済ませるところを、ビデオ通話で顔を見せると、大変に喜ばれます。

写真はイメージです【時事通信社】

 話をする人以外に、背後に映る孫やペットなど、手を振ったり、ちらりと見えたりするだけで、気分が高揚し、QOLの向上に非常に効果があると思います。SNSで日々の状況をつづったり、写真や映像をわずかでも共有したりするのは、「つながり」や「社会参加」を感じられて、心理的満足感や安心感が十分に得られるのではないでしょうか。

 移動が難しく、なかなか会えない状況の人や高齢の人こそ、スマートフォンやタブレット端末を活用すると良いだろうと考えています。日々の生活の様子を、例えば、お茶を飲んだとか、散歩先で花の咲いているのを見たとか、つぶやいたり、写真をSNSにあげたりして、会えない家族やさまざまな人とつながってほしいです。

 ◆非常時SNS使用の注意点

 海原 高齢になるとICT利用を諦めてしまう人が多いように思いますが、そうした人に利点を伝えることも大事ですね。ただ、現在のような状況では、SNSの使用に慣れていない人は注意が必要なこともありますね。

 錦谷 以前、東日本大震災時直後のツイッターの利用に関する研究の解析を行い、非常に興味深い状況が分かりました。非常時にSNSで情報共有することは、「安全確認ができた」「状況が把握できて安心した」など、即時情報を得られる利点がありますが、一方で、悪いうわさを受け取ったり、悪い情報こそ心に残って気分が滅入ったりするなど、「ツイッターでストレスや不安経験が増えた」という欠点も示されました。

 これは、SNSが悪いというのではなく、人間の性質上、仕方がないことかもしれません。つまり、人が社会的な生き物で、進化の歴史を通して危険情報を優先的に伝えてきたので、当然と言えます。私たち人間には「悪い(かもしれない)情報こそ早く伝え、後々まで記憶に残す」という性質があります。そのようにして生き残ることができたし、今日でも、そうして日々の危機管理をしています。

 そこで、「人間は悪い情報を好んで伝える傾向がある」「今は確認する暇もなく、すぐにネットで情報が伝わる」「実際の事実や現実は得られる情報と違う可能性がある」という意識を常に持って、SNSを利用するとよいでしょう。特に、災害やパンデミックなどで行動や情報が制限されているときこそ、SNSに即時性があるということや、人間の情報選択に特徴があることを意識して利用する必要があると思います。

 海原 コロナ禍でリアルな対面が制限される中、高齢の人が「自分はそういうのは苦手」と言って、敬遠することがあるのは気掛かりです。

 錦谷 情報弱者やデジタルデバイドという言葉がありますが、インターネットの接続がもっと安価になり、誰でも十分な通信速度のシステムを簡単に使えるようになることが望ましいです。利用する個人も、ITリテラシー(情報源や情報の質を判断する能力)を上げる必要があると思います。

 コミュニケーション経験の少ない、若い人はITリテラシーを高めてほしいです。情報機器の使い方や設定、仕組いを理解しにくい高齢者には、シンプルで分かりやすい契約やアプリケーションが用意されるといいと思います。いずれも、周囲の人から実地のサポートが必要です。

(文 海原純子)


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