治療・予防

脳卒中の後遺症―痙縮
筋肉の過剰な緊張で動きに制限(順天堂大学医学部付属順天堂医院リハビリテーション科 藤原俊之主任教授)

 脳卒中の後遺症などで、肘や手首が不自然に曲がったままになる症状を「痙縮(けいしゅく)」と言う。食事や着替えに支障を来すとともに、清拭(せいしき)が難しいなど介護者の負担も大きい。順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)リハビリテーション科の藤原俊之主任教授に、原因や治療法などについて聞いた。

痙縮で見られる症状

痙縮で見られる症状

 脳卒中の後遺症などで

 痙縮では、筋肉が過剰に緊張して、「手の指が握ったままになり、開きにくい」「かかとが浮き、小指側で立つ」といったことが起こる。原因で最も多いのは脳卒中で、脳卒中後の痙縮の患者数は国内に41万人以上との試算もある。頭部の外傷や脊髄の損傷、神経の難病でも起こる。

 痙縮が生じるメカニズムは一つではない。例えば、脳の障害で筋肉の緊張を抑える指令が伝わらなくなるため、特定の筋肉が自分の意志にかかわらず緊張して収縮するのだという。

 「筋肉の緊張は体の動きに必要な仕組みです。それがなければ手足は弛緩(しかん)したままで、動かせません」(藤原主任教授)。ただ、それが過剰で手足の滑らかな動きを邪魔している場合に、治療で緊張を弱める。

 ▽ボツリヌス療法が有効

 治療法には、飲み薬、注射、手術などがあり、患者の状態に合わせて選択される。中でも、食中毒菌として知られるボツリヌス菌が作るタンパク質(ボツリヌス毒素)を利用したボツリヌス療法が行われるケースが多い。突っ張りを取りたい筋肉を見極めて注射し、過剰な緊張を和らげることで、筋肉が柔らかくなって動かしやすくなる、リハビリがしやすくなるといった効果が期待できる。効き目は注射後2~3日から徐々に表れ、通常3~4カ月間続く。

 効果がなくなったら繰り返し投与することも可能だ。治療間隔や期間は患者によって異なる。副作用として注射した部位の腫れや痛み、脱力感などがある。ボツリヌス菌そのものの注射ではないので、感染する心配はない。

 藤原主任教授は「薬物治療と並行して、ストレッチで筋肉の可動域を広げたり、着替えや歩行の訓練といったリハビリを行うことが重要です」と助言する。

 痙縮について相談できる医療機関は「手足のつっぱり『痙縮』情報ガイド」で検索できる。医療費については助成される制度もあるため、併せて相談したい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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