治療・予防

寝ている間に起こる異常行動―睡眠時随伴症
大声で叫ぶ、家族への危害も(杏林大学医学部付属病院精神神経科 中島亨兼担教授)

 寝ぼけたまま起き上がって歩いたり、大声で叫んだり、時には暴れて家族にけがをさせることもある睡眠時随伴症(パラソムニア)。睡眠時に生じる異常行動であり、対処法や治療法について、杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)精神神経科の中島亨兼担教授に聞いた。

睡眠時随伴症で見られる異常行動

睡眠時随伴症で見られる異常行動

 ▽子どもは自然に治癒

 睡眠中は、深い眠りの「ノンレム睡眠」と、体は眠っていても脳は活動している状態の「レム睡眠」を交互に繰り返している。パラソムニアは睡眠中に起こる異常行動で、幾つかのタイプがある。

 ノンレム睡眠中の異常行動は小児に多い。突然、叫び声を上げておびえる「夜驚(やきょう)症」、起き上がって歩き回る「夢中遊行症」などがある。話し掛けても反応がなく、目を覚ました後に本人がその間のことはほとんど覚えていないのが特徴だ。成長とともに自然治癒する例が多く、通常は経過観察となり、特別な治療は行わない。

 パーキンソン病に発展する例も

 一方、高齢になるにつれて増えるのが「レム睡眠行動障害」だ。はっきりした口調で寝言を言うのが特徴。しかも、普段からは考えられないほど乱暴な言葉で、家族が驚くこともあるという。さらに、起き上がって暴れ出し、本人や寝ている家族がけがをする恐れもある。中島兼担教授は「家に泥棒が侵入したなどの恐怖感を伴う悪夢を見ているためです」と説明する。

 夢の大部分はレム睡眠中に見るが、通常は筋肉が弛緩(しかん)しており、体は動かない。ところが、レム睡眠行動障害になると眠っているはずの筋肉が覚醒状態になり、レム睡眠中に体が動き、夢を見ながら話したり動いたりするのだという。中島兼担教授は「起こすとはっきり目覚め、本人も夢の内容を覚えているため早く目覚めさせた方がよいでしょう」と指摘する。

 レム睡眠行動障害の多くは原因不明だが、脳内にαシヌクレインというタンパク質の蓄積が原因となることもあるという。レビー小体型認知症パーキンソン病などの発症につながる恐れもあるため、「治療と併せて経過観察を慎重に行う必要があります」と中島兼担教授。

 治療には、抗てんかん薬のクロナゼパムなどが使われる。筋肉を弛緩させる効果があり、治療すると起き上がって動き回ることはなくなる。レム睡眠行動障害は飲酒により誘発されるため、就寝前に控えることや、恐怖を感じる映画やドラマを見ないようにするなどの対策が有効だ。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】


新着トピックス