治療・予防

口腔がん早期発見のポイント
口内炎が長く続いたら受診を(横浜市立大学付属市民総合医療センター 廣田誠部長)

 舌や口の中の粘膜がただれ、なかなか治らず口内炎のような症状が続く場合は初期の口腔(こうくう)がんの可能性がある。疑うべき初期症状、セルフチェックのポイントなどについて、横浜市立大学付属市民総合医療センター(横浜市)歯科・口腔外科・矯正歯科の廣田誠部長(准教授)に聞いた。

 ▽最も多い舌がん

 口の中や唇にできる口腔がんには、舌がん、歯肉がん、口底(下の歯ぐきと舌に囲まれた部分)がん、頬(きょう)粘膜がん、口蓋(上顎の天井部分)がん、口唇がんなどがある。このうち最も多いのは舌がんで、約6割を占める。

 廣田部長は「口腔がんはがん全体の約1%を占めます。比較的少ないがんのため、一般にはほとんど知られていません。しかし、国内ではここ数十年間増え続けており、最近では推定で年間1万人弱が口腔がんを発症しています」と解説する。

 遺伝的要因や飲酒・喫煙などの生活習慣が原因とされるほか、口腔内の清掃不良、合わない詰め物や義歯などの口腔内環境から来るさまざまな慢性的刺激なども危険因子だ。

 口腔がんは、初期であれば90%程度の確率で治癒が見込めるとされるが、咽頭も含めた口腔・咽頭がんの国内の死亡率は約36%とのデータもあり、他の先進国に比べて著しく高い。「早期発見や予防の重要性が十分に認識されておらず、がんが進行後に発見される患者が多いためでしょう。特に早期発見、治療が重要ながんの一つです」

 ▽粘膜の変色に注意

 初期症状として、口内炎や歯周病のような症状が出ることが多い。廣田部長によると、舌や口の中の粘膜の特定の部位が白くなり(白板症)、こすってもそれが取れない、あるいは表面が炎症で赤くただれる状態が2週間たっても治らない場合、口腔がんの手前の状態の可能性があるという。

 そうした症状が見られたら、耳鼻咽喉科か歯科の早期受診が必要だ。また、歯ぐきにがんができると、歯肉の腫れや出血、歯がぐらつくなど、歯周病のような症状が表れることがある。

 口腔がんは早期であれば簡単な手術で治る。だが、進行して手術の範囲が大きくなると術後に後遺症が残り、容貌が変わることなどが多く、生存率は低くなる。

 「早期発見には、定期的なかかりつけ医の診察が大切です。地域で口腔がんの検診が行われていたら受けるのもよいでしょう」と廣田部長は呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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