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提供:日本国際交流センター

途上国コロナ対策に生きた経験、新たな危機へ備え
~エイズ・結核・マラリアとの闘い20年~ ―グローバルファンドと日本の国際貢献―

 新型コロナによる感染症対策における「光」とは?

 司会  日本でも2020年のHIV検査が前年に比べて半減しました。保健所が新型コロナ対応でひっ迫し、HIV検査を取りやめた時期があったり、検査に行くのをためらう人が増えた影響と言われています。日本も他人事ではないということですね。その一方で、逆に、グローバルファンドの長年の三大感染症対策で築いた検査ラボや保健情報管理システム、保健人材が、各国が新型コロナに迅速に対応するうえで大きく貢献したと聞いています。

 國井  そうなんです。ウガンダではグローバルファンドの保健システム強化支援により、検査ラボのネットワークが構築されています。ネットワークの各拠点は40キロ以内にある小規模の医療施設を支援し、全国97%をカバーしています。拠点にはバイクと運転手が配置され、検体の搬送や結果通知のために医療施設と拠点の間を往復できるようになっています。これがウガンダのコロナ対策の基盤となりました。他の多くの国でも、これまでのグローバルファンドが支援してきたサーベイランス、サプライチェーン、人材育成などの保健システム強化が新型コロナ対策で生かされています。

 司会 グローバルファンドに入って驚いたことはありますか。

 國井 中に入って驚いたのは、事務局が小さいこと。当時700人ぐらい、世界保健機構(WHO)に比べて予算は2倍なのに職員は10分の1。国連、政府、NGO、民間財団などが「私たちのグローバルファンド」と呼んで、一緒に資金を集めて、支援事業をつくり、現場で協働する。問題が起こってもそれを隠さずに公表して、一緒に問題を解決する。透明性にも驚きましたね。さらに、データに基づいて計画・実施して、徹底的に成果にこだわる。満足いかない成果の場合、その問題を追及して、パートナーシップを駆使してその解決に当たる。戦略性の高さにも驚かされました。

 司会  原さんは今年の4月から日本政府の代表として理事会の議論に参加されていますが、印象はどうですか。
   まず驚いたのは、拠出している国の理事議席が10、受益の側の議席も同じ10で、対等な立場で議論し進めていることでした。お金をどう使うかを、拠出者側の独りよがりの思いで決めるのではなく、先進国も途上国も、さらにはNGO、患者コミュニティの代表も加わって戦略策定を含め、支援の詳細を決めて進めていく点が、現場を重視したグローバルファンドの強みです。克服しようとするコミュニティの声を聞いて、それぞれの責任の所在を明確にした上で運営されています。

ウガンダの国立検査ラボで検体を調べる検査技師 ⓒThe Global Fund / Jiro Ose

 ◆「人間の安全保障」に直結

 司会  三大感染症で亡くなる人の数は20年かかって、ようやく半減しました。これだけ資金が投入されているのに、順調に急カーブで下がっているわけではありません。減らない理由は何ですか。

 國井  感染症は隠れて見えないところにあるのです。さまざまなサービスを提供しても、それが届かない人、それを得られない人、得ようとしない人などがいます。エイズや結核に対しては差別や偏見の問題もあり、貧困やジェンダーの問題など社会的・文化的背景が病気を生み、また治療や予防を妨げることもあります。

 国によって事情も大きく違います。インドのように貧富の差が大きいのに政府の力が強く、外からの介入を嫌がる国もある。コンゴ民主共和国やナイジェリアのように不正や腐敗がはびこる国もある。政府が弱い国では、NGOや市民社会がサービスを支援する必要があるのですが、その力も弱いため、エンパワメント、すなわち能力構築もお手伝いする必要がある。さまざまな困難を乗り越えて、やっと結果が出てきたという感じですね。逆に、グローバルファンドや国際社会の努力がなかったら、感染や死亡は今でも増え続けて大変なことになっています。

 司会  同じODAでも、直接相手国に支援する2国間の援助に比べて、国際機関への拠出を通じた支援は、日本の旗が見えないということがありますが、それでもメリットはあると考えますか。

   JICAのように2国間で人をつくり、保健システムを強化するという援助と、グローバルファンドのような国際機関を通じて大きな国際的な援助を組み合わせて、展開していくことが重要だと考えています。

 グローバルファンドは各地に事務所を持たないという効率性や、受益国のオーナーシップを尊重するという点を重視しています。外部からの資金だけでなく、国内の資金も動員する重要性を主張し、実践している。持続的な運用は、当初の外からの援助だけでは続かない。受益国が運転席に座って、私たちは後ろから援助する。その国の主体性を重視するという理念は、日本のODAと同じです。保健システムの強化は外からはできないことで、それぞれの政府がやってもらわなければならない。国際保健分野は、2国間援助の手法とグローバルファンドを合わせてやるというのが自然な考え方です。

 さらに言えば、日本外交が追求する「人間の安全保障」の考え方と「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」の達成にも整合するということです。グローバルファンドの「感染症からの脅威から個人を自由にする」というのは「人間の安全保障」と合致します。保健システムの強化は、すべての人に医療を安価で届けるという「ユニバーサル・ヘルス・カレッジ」と合致します。保健システム強化支援の成果を数値的に示すことができれば、グローバルファンドの取り組みをより深く理解してもらえるのではないかと思います。

 司会  今、世界は新型コロナ感染症に翻弄されていますが、コロナが終息しても必ず新たな感染症がやって来ます。将来の危機に備えてグローバルファンドはどう対応できるのでしょうか。

 國井  さまざまな感染症がありますが、その対策は基本的に似ています。検査はそのまま対応できるものがありました。HIVと結核で使っていたPCR自動検査装置は、カートリッジを変えてそのままコロナに使えました。途上国でもかなり早い時期に導入できました。

 検査の後の隔離、接触者調査、そして治療や予防についても、現在の感染症対策を応用することで将来の脅威にも立ち向かえます。それを見据えて、デジタル技術を使ったデータ管理、サーベイランス、より迅速に大量に現場に必要な物資を届けられるサプライチェーンシステム、地域で機動力となる人材の育成など、グローバルファンドが貢献できることはたくさんありますし、それらを計画しています。

 司会  次の10年、グローバルファンドにどんなことを期待されますか。

   発足から20年を経て、依然として三大感染症を終息させられない現状があり、2030年までの終息という目標達成が、引き続き重要な課題となります。それだけでなく、新しい感染症にどう対応していくのか。また、非感染症、母子保健、高齢者の介護など、さまざまな課題が保健分野で多様化しています。人間に着目して、持続可能な保健システムをどうつくっていくのか。今回の新型コロナ感染症をきっかけに考えさせられることになりました。

 三大感染症対策というグローバルファンドの主要な任務・性格は、今後も変わらないでしょう。しかし、今回のコロナ対応で証明したように、保健システム強化支援をうまく活用して、グローバルファンドが将来の感染症危機においても役割を果たしていくことが可能です。理事会でも次の6カ年戦略、今後の課題、役割について議論を始めています。

グローバルファンドの過去と未来を熱く語った(9月13日、東京・赤坂で)


 國井 修(写真中央) グローバルファンド戦略・投資・効果局長。自治医科大学、ハーバード大学公衆衛生大学院卒。日本のへき地医療、NGOの国際緊急援助などを経て、長崎大学熱帯医学研究所教授、国連児童基金(UNICEF)本部の上級保健戦略アドバイザー、ミャンマーやソマリアの保健・栄養・水衛星事業部長。2013年から現職。


 原 圭一(写真右) 外務省国際協力局参事官(地球規模課題担当)。1992年東大法学部卒。外務省入省。欧州局政策課長、在アフガニスタン日本大使館公使、在中国日本大使館公使などを経て2021年4月から現職。日本政府を代表してグローバルファンド理事を務める。


 伊藤 聡子(写真左) 公益財団法人日本国際交流センター執行理事 。ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)修士課程修了。民間企業を経て1988年日本国際交流センター(JCIE)入所。グローバルファンド日本委員会の立ち上げに関わり、現在は事務局長を務める。


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