ハヤミミDr.純子のメディカルサロン

1日の自由時間どれだけで幸福感アップ?
~楽しめるかどうかは充実感が決め手~

 仕事で自分の時間がない、とおっしゃる男性に「1日にどのくらい自由時間があるといいですか」と聞きてみました。「それは多ければ多いほどいいですよ」というお答え。あなたはいかがでしょうか?

 「自由時間は多ければ多いほどいい」と思いがちですよね。でも、実はそうでもないという研究結果が報告されています。今年5月にJournal of Personality and Social Psychologyにカリフォルニア大学の研究グループが発表した論文によると、「自由時間は多過ぎても少な過ぎても、主観的なウェルビーイング(well-being:幸福感)は高くはならない」のだそうです。

(文 海原純子)

観光農園のビニールハウス内に絵本がずらり。読み聞かせを楽しむ親子(2020年10月17日撮影、神奈川県平塚市で)

 ◆長過ぎてもだめ?

 では、自分で自由に使える時間がどのくらいあればいいのか、気になるところです。この研究は実に大規模な調査で、まず、2万人を超える人を対象にして、1日の過ごし方と主観的ウェルビーイングの関連を検討しました。

 1日のうち2時間までは、自由時間が長くなるほどウェルビーイングは高まるのですが、それを超えると横ばいになり、5時間を超えると逆に有意に低下してしまうのだそうです。さらに、研究チームはNational Study of Changing Workforceのデータを使って、1万3000人余りについて、自由時間と生活満足度の関わりを分析しました。すると、ある一点までは自由時間が多くなるほど満足感は上がるのですが、それを超えると満足感との相関はなくなることがわかりました。つまり、単に長くてもだめなんですね。

 ◆1日3.5時間が最適か

 さらにこの研究では1日の自由時間が15分、3.5時間、7時間与えられたというイメージをしてもらい楽しみや幸福、満足感をどの程度感じられるかという想像して答えてもらったそうです。極端に少ない15分と、極端に長い7時間では、適度な3.5時間に比べて幸福感が低かったのです。少ない自由時間では人はストレスを感じる一方、長くても「生産性が低い」と感じてしまい、幸福感が低くなるのです。短くても長くても幸福感は低下するのですね。

 もう一つ興味深いことは、生産的な方法、例えば、運動や趣味などで自由時間を過ごす人は、自由時間が長くても短くても同じくらいの幸福感を得られるのに対し、非生産的な方法、例えば、ネットやテレビで時間を費やす人は、長い自由時間だと幸福感を得られなくなるということです。

大阪府大東市の高齢者が集まり公民館で開かれた「元気でまっせ体操」(2017年4月撮影)

 ◆楽しみ方で幸福感は異なる

 ポジティブサイコロジーの分野では、ヘドニアとユーダイモニアということが指摘されています。ヘドニアは、ある活動をしているときの楽しみ、つまりテレビや映画を見たり、コンサートに行くような楽しみです。ユーダイモニアは、個人的な充実感を感じる活動をして感じるアイデンティティ―と結び付いた喜びです。自分が充実感を感じ、自分の可能性を拡げることを楽しめる人は自由時間が長くても幸福感が得られるけれど、そうでない場合は、長すぎる自由時間は持て余してしまうと言えそうです。

 そう言えばその昔「休みは嫌いで、土日は時間を持て余す」と言っていた昭和の男性もいましたね。長い自由時間を楽しめる人かどうかは、その方の楽しみ方がヘドニア型かユーダイモニア型かで決まるようです。

                          

 10月30日に日本ポジティブサイコロジー医学会学術集会が開かれます。医学の学会ですが、オンライン開催です。今年はコロナ禍で、多くの人にこの心理学を知っていただく目的で、医師や研究者だけでなく一般の人が参加できるようにしました。参加費(一般6千円、医師1万円)は要りますが、1年間視聴できます。後で、復習したり周りの人と一緒に話し合ったり、活用をしていただくことができます。

 困難な状況でいかに心の向きをうつスパイラルに落とし込まないか、など日常生活のヒントになる講演が多くラインアップしています。

日本ポジティブサイコロジー医学会学術集会



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