治療・予防

パーキンソン病患者の運動習慣
~進行を長期間抑える可能性(京都大学大学院医学研究科臨床神経学 月田和人医師)~

 手足の震えに加え、筋肉や関節がこわばる、動作が緩慢になるなどの症状が表れる神経の病気パーキンソン病は人口高齢化に伴い急増している。日常的な運動習慣が進行を長期的に抑制する可能性があると研究で分かり、担当した京都大学大学院医学研究科(京都市)臨床神経学の月田和人医師に聞いた。

運動量が多いと歩行・姿勢の安定性の数値が改善

運動量が多いと歩行・姿勢の安定性の数値が改善

 薬物治療の有効性

 パーキンソン病は、体の動きを調節する神経に命令を送るドーパミンという脳内物質が減ることで発症し、進行すると、認知機能やバランス感覚の低下なども伴い、要支援・要介護状態になる可能性が高い。ドーパミンを作る神経細胞が壊れるためだが、壊れる原因はまだ十分解明されていない。

 基本的な治療はドーパミンの補充療法で、運動に関連した症状を軽減できるが、根本的な治療でないため進行を抑制できない。また、認知機能やバランス感覚の低下には効果が薄いという弱点もある。そこで月田医師らは、運動習慣に着目し、その進行抑制効果を明らかにする研究を行った。

 運動で異なる効果

 これまでの研究で、日常的な身体活動や運動習慣は半年程度の短期的な症状改善効果をもたらすことが分かっている。しかし、「長期的な効果は分かりませんでした。そのため国際研究のデータを用い、パーキンソン病患者を日常生活での運動量と症状の推移との関連を5~6年にわたり検討しました」と月田医師。

 検討の結果、1日1~2時間のハードではない運動を週1~2回続けると、歩行や姿勢の不安定性の進行を抑えることが分かった。また、家事の活動量が多い人は少ない人に比べ、日常生活動作の能力低下の進行を抑え、仕事で1日2~3時間活動した人はそうでない人に比べ、認知機能低下の進行を抑えることができた。

 「日常的身体活動量や運動習慣を維持すれば、パーキンソン病の進行を長期的に抑制できる可能性が示されました。また、運動の種類により異なる効果が得られ、ドーパミン補充療法では改善が難しい部分に主に効果があることも分かりました」

 月田医師は「転倒に注意する必要がありますが、運動は安価ですし、気分も良くなります。楽しく長く続けていきましょう」と呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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