治療・予防

保護者が悩む「低身長」
~個性受け入れる環境を(大阪母子医療センター消化器・内分泌科 恵谷ゆり主任部長)~

 自分の子どもが同年齢の子と比べて小柄なことに不安を感じ、「病気かもしれない」と悩む保護者は少なくない。中には病気が原因の場合もあるが、最も多いのは遺伝的要素によるものという。大阪母子医療センター(大阪府和泉市)消化器・内分泌科の恵谷ゆり主任部長に聞いた。

 ▽身長は遺伝が約7割

 発育の程度は、同年齢の子どもの身長の平均値を中心に、どのくらい離れているかを見る標準偏差(SDスコア)を基に、1年間の成長率や体重とのバランスも加味して評価される。「医学的には、マイナス2SD(18歳の場合、男性は159cm、女性は147cm)より低ければ低身長と扱います」と恵谷部長。

 低身長の原因には、「成長ホルモン分泌不全性低身長症」をはじめとする成長ホルモン治療の対象になる病気もある。しかし、最も多いのは子どもの頃から身長が低い、思春期が早めに始まり成長が早く終わる、思春期に身長の伸びが少ないなど、父母からの遺伝的要素だ。「体質によるもので、薬による治療が期待できないと分かると落胆したり、見た目への影響から思い詰めたりと、保護者の負担感も少なくありません」。しかし、「低身長は、父母でも子どものせいでもない、個性の一つ」と恵谷部長は強調する。

 食事を楽しむ工夫を

 低身長の子どもを大きくしたいと考え、たくさん食べさせようとする保護者も多い。しかし、小柄で胃が小さいため1回の食事量は少なくなりがちで、すぐ空腹になる。「夕食前におなかが空いた時は、残り物のおかずとご飯、ピザトーストなど、エネルギーになる炭水化物と成長の元になるたんぱく質の組み合わせがお勧めです」と恵谷部長。食事をきちんと取っていれば、プロテインやサプリメントは不要。牛乳を無理に飲ませたり、あまり食べないことを責めたりせず、「楽しく食べることが大事」と説明する。食事に集中できる環境や睡眠不足にならないように生活リズムを整えるなどの工夫も成長を促す。

 「特に2歳までは栄養、幼児期から学童期は成長ホルモン、思春期には性ホルモンが成長の重要な因子となります。コロナ禍の不安から、子どもの摂食障害が増えています。学童期、思春期でも低栄養になると身長は伸びません。過度なダイエットを行わず、発育に必要な栄養を取ることが大切です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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