Dr.純子のメディカルサロン

葛藤と再生の物語 「午後8時の訪問者」

© LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA - VOO et Be tv - RTBF (Télévision belge)
 午後7時で診療が終わる日、午後8時に診療所のドアベルが鳴る。

 対応するか、しないか。たまたま約束があり、返事をしなかった優秀な女性医師ジェニー。その日はステップアップする彼女の次の職場での歓迎パーティーの夜だった。ジェニーは設備の整った大病院に近いうち好待遇で就職することが決まっていたのだ。

 ベルは一度鳴っただけ。大したことではなかったのだろう―彼女はそう思った。だが、翌朝身元不明の女性の死体が発見され、それが防犯カメラに映し出されたドアべルを鳴らした女性だと知らされがくぜんとする。身元不明の女性は誰なのか、それを探る彼女の旅は、実は彼女自身の生き方を探る旅でもあった。

 この映画は、偶然の連鎖から引き起こされた一人の身元不明の少女の死の背景を探るジェニーとその事件に関わった人々の葛藤を描いた作品である。

 少女の死は、事件に関わった人々の人生を、悔恨から葛藤を経て再生へと変えていく。主人公のジェニーもまた、そうだ。どんな困難な出来事も、自分の歩む道を見いだすために存在する、そんなことに気付かされる作品である。

【医学博士 海原純子】
                           


4月8日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

  • 1
  • 2

メディカルサロン