インタビュー

骨密度高くても骨折リスク=斎藤充医師に聞く(下)

骨粗しょう症の診断の目安となるのが、骨のカルシウム量を調べる骨密度(骨量)だ。ただ、骨密度が高い人でも骨折するケースがある。近年の研究で、原因の一つとして生活習慣病が深く関係していることが明らかになってきた。骨粗しょう症の原因と治療法について、研究や治療に詳しい慈恵医科大学整形外科教授の斎藤充氏に聞いた。

◇コラーゲン劣化に注目

―骨密度が高くても骨折するのはなぜか。

斎藤 骨粗しょう症は性ホルモンの低下や加齢に伴う骨吸収の低下で骨密度を現すカルシウムが減少し、骨折しやすくなると考えられている。その定義は1994年に世界保健機関(WHO)で承認された。しかし、骨密度の値が高くても骨折リスクが高い患者がいることから、カルシウム以外にも骨の強度に大きく関係している成分があるということが当時から分かっていた。

骨はカルシウムとタンパク質のコラーゲンで構成されている。一般的に骨の成分の80%がカルシウムといわれているが、これは重量のことだ。体積から考えると、カルシウム50%、コラーゲン50%となり、半分をコラーゲンが占める。私はこのコラーゲンが骨の強度に関係する重要な成分ではないかと考えた。2010年の国際会議で、骨の強度は骨密度と骨質により規定されると定義され、その後、骨粗しょう症の新たな原因として、骨密度に加えコラーゲンの劣化が着目されるようになった。

カルシウムの食事摂取基準:mg/日(厚生労働省サイトより)

◇危険度高める生活習慣病

―コラーゲンの劣化は単なる老化現象と考えてよいのか。

斎藤 骨を構成するカルシウムとコラーゲンは鉄筋コンクリートの建物に例えると、コラーゲンが鉄筋でカルシウムはコンクリートだ。コラーゲンは棒状のカルシウム分子に結合し、架橋の役割をすることで強度を保っている。一方、コラーゲンは加齢などのさまざまなな要因で劣化すると、さび色に変化し、強度が低下する。通常、コラーゲンは加齢とともに徐々にさびていくが、生理的なさびであればそれほど骨には影響しない。骨量が十分なのに骨折する患者は、コラーゲンが過度にさびるということが分かってきた。

これには、生活習慣病の因子として知られる活性酸素が大きく関係している。糖尿病や腎臓病など生活習慣病により活性酸素が増えることで、コラーゲンが過剰にさび、骨密度にかかわらず骨折を起こしやすくなると考えられる。国内外の調査によると、生活習慣病の人は骨密度が高くても1.2~2.5倍以上、骨折するリスクが高い。生活習慣病は血管の老化で動脈硬化を引き起こすだけでなく、骨にも大きな影響を及ぼす。

 具体的には、糖尿病の診断基準であるba1c(ヘモグロビン・エイワンシー)の値が7.5以上、慢性腎臓病(CKD)でステージ3以上、推算糸球体濾過量(eGFR)60未満、超音波検査で腹部大動脈石灰化が認められた場合、骨密度が高くても骨質が低下しているため、骨折の危険性があり注意が必要だ。

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