医療ADR

【連載第2回】使いやすい制度で和解目指す=公平性、専門性を担保―弁護士会医療ADR

 ◇医療側の申し立ても可

 医療ADRへの申し立てができるのは、賠償や謝罪、説明などを求める患者側だけではない。患者側から損害賠償を請求されている医療機関側が申し立てることも可能だ。

 例えば、医療機関が医療事故などで一定の責任を認め患者と和解したいものの、事実経過や医学的評価、損害賠償額などについて、患者の理解が得られず和解できないというケースが挙げられる。ADRは、中立的な第三者を介して相互理解を深めることが可能で、和解を前進させる手段として医療機関側の選択肢となる。

 東京三会医療ADRでは、2009年5月~14年12月に医療機関側から9件の申し立てを受け、7件で和解が成立した。

 ◇各弁護士会、多彩な工夫

 ADRでは両当事者が話し合い、双方の納得の下での和解を探るが、それを中立的立場で取り仕切るのがあっせん人だ。各弁護士会では、あらかじめあっせん人候補者リストが作成され、事案ごとに選任される。

 紛争当事者の間に入って話し合いを進めるあっせん人には、高い公平性が必要だ。それとともに、医療分野の専門的知見や医事紛争解決のノウハウも紛争の適切妥当な解決にとって重要。各弁護士会は、医事紛争の解決に必要な公平性と専門性の両立をどう図るか、さまざまな工夫を凝らしている。あっせん人の人数や、どのようなバックグラウンドを持った人を手続きに参加させるかなど、そのバリエーションは多彩だ。

 札幌弁護士会では、医事紛争で患者側代理人の経験が豊富な弁護士(患者側弁護士)と医療機関側代理人の経験が豊富な弁護士(医療側弁護士)の2人体制であっせん手続きを進行する。

 東京三会や福岡県弁護士会では、患者側弁護士と医療機関側弁護士に加えて、医事紛争以外のあっせん事件を多く手掛けた弁護士からなる3人体制で進行する。民調(大阪弁護士会)は、患者側弁護士、医療側弁護士、医師の3人体制だ。

 いずれも、患者側、医療機関側それぞれの代理人経験が豊富な弁護士を参加させるところに特徴があり、これによって、医事紛争解決に関わる専門性と、公平性を担保するようにしている。

 これに対し、愛知県、仙台、岡山各弁護士会では、医事紛争以外の分野で損害賠償実務などの経験が豊富な弁護士1人体制で和解あっせんを行うことが原則。事案によっては医師が知見に基づく説明を行う専門委員の形で加わる。中立的立場の弁護士があっせんを行い、医師が専門委員として手続きに参画することで専門性を補充している。


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