よく食べ、動き、笑う
~口が不健康だと長期入院に(東京医科歯科大学 山口浩平講師)~
口腔内の細菌や飲食物などが誤って気管に入り込み発症する誤嚥(ごえん)性肺炎。高齢者に多く命に関わる病気だが、口の中の健康が保たれていれば早期に退院できることが分かった。東京医科歯科大学(東京都文京区)摂食嚥下(えんげ)リハビリテーション学分野の山口浩平講師に聞いた。
口内の健康維持
◇細菌の影響抑える
山口講師らの研究グループは、順天堂大学医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センターに入院した誤嚥性肺炎患者89人(平均84.8歳)の歯の状態や口の衛生状態などを定期的に調べた。唇、舌、歯肉・粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛の8項目で構成された評価法(OHAT)でみた。その数値が高いほど口腔健康状態が不良であり、長期入院の人は入院時のOHATが高い傾向にあった。
口腔健康状態が悪いほど入院期間が延びることも分かった。「見方を変えると、普段から口の健康を維持すれば、誤嚥性肺炎になっても大事に至らずに済む可能性があります」
◇栄養、活動と交流
年齢を重ねるにつれ、喉や顎の周り、舌の筋肉が衰える。そうすると、「食べ物をかみ、こね回し、飲み込む一連の機能が徐々に低下します」。むせて誤嚥しやすくなったり、話していると舌がもつれたりする。次第に硬いものやかみ応えのあるもの、さらには会食を避けるようになる。
このような状況を防ぐために、よく食べ、よく動き、よく笑うことを山口講師は勧める。
「栄養を摂取し、悪い歯を治療する、虫歯や歯周病を予防する。外出の機会を増やせば、全身の骨や筋肉を使い、社会との関わりも生まれます。社会とつながっていれば、笑う機会も増えるでしょう」
口の衛生を保つには、歯磨きや「ぶくぶくうがい」が良い。軽い歯磨きでも歯茎から出血する場合は、歯科医院を受診することが重要だ。▽かみにくくなった▽食べる時間が長くなった▽量が減った―場合も歯科医やかかりつけ医に相談したい。
口の健康は肺だけでなく、全身の健康にも関わる。栄養摂取ができなくなると、「痩せて太ももなどの筋肉が落ち、ふらふらして転びやすくなります。体重を定期的に計り、変化に気を付けましょう」と山口講師はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/09/06 05:00)
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