特集

ロボットが変える手術=執刀医はコンソールで操作

 患者への負担の少ない手術として期待されている腹腔(ふくくう)鏡手術だが、困難さも伴うのが課題だ。最近、それを克服するための支援ロボット「ダヴィンチ」による手術が注目されている。手術の現場を取材した。

 腹腔鏡手術では、医師は皮膚に開けた小さな穴から体内に送り込まれた小型カメラからの映像を見ながら、同様に体内に入れたマジックハンドの先端に装着した鉗子(かんし)と呼ばれるメスや吸入器を操作し、患部の切除や傷口の縫合などを行う。ただ、カメラからの二次元画像では距離感などが把握しにくい上に視野も制限される。さらに、体内奥深くまで入れたマジックハンドの操作についても一定以上の技量と習熟が求められる。

 ◇腹腔鏡手術の課題改善

 こんな制約を軽減するために登場したのが、ダヴィンチだ。本体は3~4本のロボットアームを備え、その先端には腹腔鏡手術で使う鉗子と同じようなさまざまな手術器具を装着している。

 手術の模様を伝えるのは三次元カメラだ。操作する執刀医は少し離れた操作用コンソールに座る。双眼鏡のような「ビューポート」を通して立体的な画像を見る。手術室内のモニターにも映し出すことで、スタッフや指導医が手術の進行状態をリアルタイムでの把握できる。

 ロボットアームの操作は執刀医が両手両足を使って行い、機械的にアシストされる。
 前立腺がん、標準的治療に

 ダヴィンチは20世紀末に米国で開発された。日本に導入されたのは2006年。12年に前立腺がん、16年には一部の腎がんの手術への使用が健康保険で認められた。現在、約270台が全国の医療機関で使われている。

 日本への導入以来、ダヴィンチ手術に取り組んできた新百合ケ丘総合病院(川崎市)ロボット手術センターの吉岡邦彦センター長は「新型のロボットはアームが4本に増え、鉗子径が小さくなり、より小さな傷で手術が可能になった。さらにカメラからの画像にも『ここにメスを入れる』といった指示が矢印などの形で加えられるようになり、執刀医に対する周囲からの教育的な機能も向上した」と技術の進歩を紹介する。前立腺がんの手術では「標準的な治療法になった」と言う。

  • 1
  • 2

新着トピックス