現代社会にメス~外科医が識者に問う

女性議員が増えない“ありえない”理由
~日本は選挙後進国から脱出できるのか~ ジャーナリスト長野智子さんに聞く(上)

 日本で初の女性国会議員が誕生したのは1946年。80年近くを経て、国会議員に占める女性比率は増加したものの、わずか16%(2024年)。「男女共同参画」「女性活躍推進」を声高に掲げているにもかかわらず、なぜ女性議員が増えないのか。長年にわたりテレビ業界に籍を置き、ジャーナリストとして第一線で活躍の場を広げている長野智子さんは、国政選挙の議席や候補者の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」を実現するための勉強会を主宰し、現役議員と共に実現に向けての活動に尽力している。

 長野さんが勉強会を立ち上げた思いや、勉強会から見えてきた日本の政界における実情について語ってもらった。

長野智子さん

長野智子さん

 ◇女性議員はなぜ増えないか

 河野 「クオータ制実現のための勉強会」を開催しようと思ったきっかけを教えてください。

 長野 20年間キャスターを務めたテレビ朝日の報道番組を卒業した時に、田原総一朗さんから「ジャーナリストを名乗るなら信念がないとダメだよ」と言われ、即座に「女性の国会議員を増やしたい」と頭によぎりました。報道の現場にいる時から、女性の問題を取り組むのになぜ女性の国会議員が増えないのか疑問に思っていました。田原さんから「国会議員を集めて勉強会をやればいい」と背中を押され、野田聖子さん、辻元清美さん、当時国民民主党議員だった矢田稚子(わかこ)さんを紹介していただきました。ジェンダーの問題に熱心に取り組んでいる議員の方々と、女性の国会議員を増やすために党を超えて連携できないかを提案したところ、2021年5月、この提案に賛同した7党(その後8党)の議員が月1回集まって、意見交換する勉強会が立ち上がりました。

 ◇本音で語れる場づくり

 河野 勉強会ではどのような議論が交わされたのでしょうか。

 長野 国会議員は議員連盟(議連)に出席する機会がたくさんあり、そこでも党派を超えてジェンダーの問題に取り組んでいます。ただ、「常に党の方針を背負っているため、一国会議員として忌憚(きたん)なく意見を交わす機会がない」と言われて驚きました。この勉強会は女性議員が党の垣根を越えて自由に話せる場にしたいという要望に応え、そのスタイルを取りました。すると、女性議員がいかに働きづらい環境に置かれているか、今までメディアで取り上げてこなかった実態が出るわ出るわで、途中からは記者の方にも加わってもらい、メディアフルオープンにして一般の方にも発信するようにしました。2年ほどこのスタイルを続け、問題点がかなり出尽くしたところで、法案作成は議連が行うということで、23年からは外部からゲストを招き、さまざまなテーマで勉強会を続けています。先日、河野さんにゲストとしてご登壇いただき、外科医不足の現状をお話しされた時もかなり反響がありました。


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