現代社会にメス~外科医が識者に問う

女性議員が増えない“ありえない”理由
~日本は選挙後進国から脱出できるのか~ ジャーナリスト長野智子さんに聞く(上)

「クオータ制実現のための勉強会」の様子

「クオータ制実現のための勉強会」の様子

 ◇女性議員が増えない6つの理由

 河野 そういう経緯があったのですね。クオータ制を実現するための障壁や問題点を出し合ったということですが、女性の国会議員が増えないのはどういう理由があったのでしょうか。

 長野 勉強会で出た問題点を凝縮してまとめると、理由は大きく分けて六つあります。一つは、選挙においてマタハラやセクハラ、いわゆる「票ハラスメント」が横行していて、女性が立候補しづらい環境にあることです。例えば、妊婦や子育て中の人が実現したい社会を目指し勇気を出して立候補しても、古い考えの女性有権者たちや応援されるはずの県連からも「子供ができてからにしなさい」「子供を犠牲にしてまですることではない。子育てが終わってからやればいい」などと言われます。

 さらに、信じ難いのですが、選挙活動で握手した手を離さない、「写真を撮りましょう」とお尻を触られる、「投票するから今晩付き合え」と言い寄る、事務所にしている実家へのストーカー行為等、国会議員の立候補者のみならず秘書やスタッフの女性にも「票ハラスメント」が行われ、不快な思いをするというのが大きな理由です。

 二つ目は、家庭や地元を守る妻や母の立場で、現状の活動では出産や子育てをしながら選挙や国会議員の活動を続けるのが非常に過酷ということです。男性の国会議員は妻に地元と家庭を任せて24時間頑張ることが可能かもしれませんが、それができない女性は負担や疲弊度が全く違います。

 三つ目は、小選挙区制度です。選挙区によっては席に座れる候補者がすでに決まっていることが多く、大半の政党が現職優先の方針をとる中で、新しく女性候補者を擁立することは不可能に近い。

 四つ目は、各党や県連で候補者選びをする選挙対策委員会のメンバーが男性ばかりで、女性の候補者を増やすという発想にはまずならない。

 五つ目が、日本の政治家はとにかく世襲議員が多いので、政治が家業になっていて女性や異分子である新しい候補者を入れたがらない。

 六つ目は、そもそも候補者どころか各党の執行部や意思決定機関が現状を変えたがらず、意思決定層に女性を置かない。多くの党は執行部に女性が入っていません。女性の議員を育てる気がないのが分かります。

 女性の国会議員が経験を積んで上がっていくことが非常に難しい環境であるというのが決定打です。現在女性国会議員で活躍されている方々は、まさにこれらをくぐり抜けてきた「鉄の女」とも言える人たちなのです。


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