現代社会にメス~外科医が識者に問う

女性議員が増えない“ありえない”理由
~日本は選挙後進国から脱出できるのか~ ジャーナリスト長野智子さんに聞く(上)

 ◇重要なのは問題解決につなげること

 河野 男性の尻に火が付いて、本格的に動きだしたということですか。

 長野 女性の権利や尊厳を守ることはもちろん大切です。しかし、意思決定層にいる男性たちは、人口減少や経済合理性の観点から、女性が働きやすい環境整備に目を向け、結果的にこれまでのフェアではない状況の改善に目を向けるようになっています。この二つの柱を見誤らないようにして、どんな状況であっても、ここにきて男性がようやく重い腰を上げたことに対してプッシュしていく必要がありますね。

聞き手・企画:河野恵美子(大阪医科薬科大学 医師)、文・構成:稲垣麻里子

 長野智子(ながの・ともこ) ジャーナリスト。上智大学卒業後、(株)フジテレビジョンにアナウンサーとして入社。90年結婚退社。フリーアナウンサーとして数多くの情報・バラエティー番組司会を担当。95年より渡米。報道キャスターを目指し、ニューヨーク大学大学院で学ぶ。99年ニューヨーク大学メデイア環境学修士課程卒業。00年よりテレビ朝日で報道キャスターとして多くのニュース番組を担当。現在は国連UNHCR協会理事としてヨルダンやケニアなど世界各地の難民キャンプを訪ねている。24年4月から文化放送「長野智子アップデート」パーソナリティー。番組司会、コメンテーター、執筆、ナレーションなどその活動は幅広い。近著に「データが導く『失われた時代』からの脱出」(河出書房新社)。

 河野恵美子(こうの・えみこ) 大阪医科薬科大学一般・消化器外科医師。01年宮崎大学を卒業。06年に出産し、1年3カ月の専業主婦を経て復帰。11年「外科医の手プロジェクト」を立ち上げ手術器具の研究を開始、15年に2人の女性外科医と消化器外科の女性医師を支援する団体「AEGIS-Women」を設立。20年に内閣府男女共同参画局「令和2年度女性のチャレンジ賞」を受賞。22年「手術執刀経験の男女格差」の論文をJAMA Surgeryに発表。24年に「令和6年度女性のチャレンジ支援賞」(AEGIS-Women)受賞。パブリックリソース財団「女性リーダー支援基金~一粒の麦~」二期生。厚生労働省医学部生向け労働法教育事業の委員。TEDxNambaにも出演。

*1:国会や地方議会の選挙で男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党や政治団体に求める法律。超党派の議員立法として2018年(平成30)5月に公布、施行された。正式名称は「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(平成30年法律第28号)。

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