現代社会にメス~外科医が識者に問う

女性議員が増えない“ありえない”理由
~日本は選挙後進国から脱出できるのか~ ジャーナリスト長野智子さんに聞く(上)

長野智子さん

長野智子さん

 ◇女性が立候補しやすい環境整備が急務

 河野 議員も医師も類似の問題を抱えていますね。

 長野 日本にはいろいろな有権者や国民がいる中で、鉄のような少数の女性だけでは立場の弱い女性たちのことを全て理解し発想できるか疑問が残ります。多様な人が政治の世界に入ってさまざまな立場から議論するべきなのですが、受け入れ体制ができていないのです。まずは女性が政治家として活動できるような環境を整備していく必要があります。

 2018年に施行された「候補者男女均等法」*1が21年に改正され、政党・政治団体、国、自治体、議会にセクハラ・マタハラを防ぐ規定の導入や、育児・介護を理由に議会を欠席できる制度等、女性が選挙に挑戦しやすくする環境整備が加わりました。

 それ以降、各党が対策に乗り出し、ここ2年で意識や環境が大きく変わってきたと実感しています。自民党は23年に新たに衆院選に立候補する女性候補者や、子育てや介護中の候補者に1人当たり100万円を支給するなどの支援策を打ち出しました。また、各党が趣向を凝らして地方議会の女性同士をつなげたり、グループワークを行うなど女性議員の育成に努めたりしています。候補者の男女比率に関しては義務化ではなく、努力義務にとどまってはいますが、法律になったことで大きく前進したといえます。

 ◇クオータ制は逆差別ではないか

 河野 法律が改正されたことで流れが変わったということですね。

 長野 法律を作るのも変えるのもそれができるのが国会議員です。社会を変えるには国会議員の意識や国会議員そのものを変えることが何よりも重要なのです。

 河野 クオータ制の導入は、女性の割合を増やすために能力のない人や経験不足の人を登用するリスクもあり、逆差別ではないかという声もあるようですが、そのあたりはいかがですか。

 長野 確かに21年にクオータ制の勉強会をスタートした時は反発がすごかったです。今年で4年目になりますが、この4年間でそういった声は減ってきていて、女性議員を登用することに対しての社会の意識が明らかに変わってきていると感じています。


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