医療ADR

【最終回】「魅力的な選択肢」になるために =弁護士会医療ADRの課題と未来

 2007年4月の「裁判外紛争解決手続の促進に関する法律」(ADR法)施行から10年が経過した。これまで認証を取得した民間ADR機関はさまざまな分野で計140を超えており、法務省や日本弁護士連合会(日弁連)などが、さらなる普及と運用改善へ向け工夫を積み重ねている。

 裁判は厳格な証拠調べで事実認定する手続きであるのに対し、ADRは公正中立な第三者が当事者同士の対話と相互理解を促しながら、紛争の実情に即した形で迅速な解決を図る。

 民法学者の我妻栄(1897―1973)は自著「法律における理屈と人情」で、「いくら法律家でも、理窟(りくつ)さえ通ればよい、杓子(しゃくし)定規でかまわないと思っているものは少ない」「なんとかして理窟と人情を調和させたい、杓子定規に終始しないで、人情味を加味したい」など述べていた。ADRはまさに我妻の言葉を実践するシステムと言える。

 連載ではこれまで4回にわたり、弁護士会医療ADRの特徴や可能性を示したが、一方で課題も少なくない。急速に進む超高齢社会において、医療や介護の分野で生じる新たなトラブルを解決するために、医療ADRはどうあるべきなのか、未来像を考えてみたい。


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