【最終回】「魅力的な選択肢」になるために =弁護士会医療ADRの課題と未来
◇広範な理解が不可欠
弁護士会医療ADRを使いやすい制度にする第1のカギは、紛争解決の専門家としての弁護士が患者側、医療機関側双方と相携え、理屈と人情、公正中立な解決と専門性・迅速性を両立させる工夫を重ねていくことだ。
◇専門知識で中立性確保
東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会(=合わせて東京三会)の医療ADRの大半では、弁護士3人をあっせん人に選任。このうち2人は患者側、医療側それぞれの代理人経験がある弁護士が充てられ、医療紛争に関する専門知識は代理人経験のあるあっせん人を通じて審理に生かされる形になっている。
愛知県弁護士会医療ADRのように、通常は患者側、医療側双方の代理人経験がない弁護士1人をあっせん人に選任する一方、必要に応じ専門委員として事案とは無関係の医師を呼び、専門知識を聞く協力体制を取りながら話し合いを進める制度もある。いずれも医療紛争解決のため、工夫を重ねた結果と言える。
医療機関へのアンケートでは、医師が専門委員ではなく、手続きそのものへの関与を望む意見が多い。しかし、話し合いの中立性を危惧する声もあるのは事実で、医師の関与を認めるにせよ、認めないにせよ、対外的に制度設計の意図を説明できるようにしておく必要があろう。
都道府県や中核都市には医療法に基づいて「医療安全支援センター」が設置され、医療事故を含むさまざまな相談が寄せられている。また、医療機関、医師会、民間でも医療事故の相談窓口が設置されている。医療ADRを設置している各弁護士会はこれまでも、これらの相談窓口と意見交換をするなどの活動を行っているが、医療事故の公正中立な解決に向け、さらに連携を強めていくべきだ。
(2017/09/30 15:15)