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へたれたら「私はスーパーウーマン!」と声に出して言ってみる 内山眞幸・東京慈恵会医科大教授


 海原 先生のご専門は小児領域の核医学ですが、どのような研究なのでしょうか。

 内山 核医学の検査一般、内照射療法が専門です。検査の中では、小児領域に最も興味があります。もともと画像診断医で、診断をやっていた時から小児画像診断に興味があり、卒後3年目から埼玉県立小児医療センターで勉強させていただきました。今でも読影に週1日伺っています。

 核医学会では小児核医学検査適正施行検討委員会の委員長をしています。小児は対象疾患が成人と異なり、変化する生理的発達の中で経過観察を行わなくてはなりません。対象疾患により罹患年齢帯も異なってきます。投与量、撮像時間など検査プロトコルを変えなくてはなりません。小児の検査をうまくやる、安全にやる、効率よくやる、最大限に読影するための研究です。


 海原 放射線科の若い女性医師が自宅で読影だけをしているようなケースも多いようですが、その実態をどのようにお考えですか。

 内山 日本は企業の役員、政治家なども女性参加が少ないようですね。子育てなどで忙しい時期は、自分が納得できるのであればどんな形で仕事をしても大丈夫。現場に出る機会を失わないように、つながりを保つ努力は必要でしょう。首をひねる例を挙げるとすれば、それまで時間短縮勤務などで頑張っておられた方が、子どものお受験のために常勤を辞められることがあります。それはいかがかと思います。

 受験は将来羽ばたくための単なるステップ。教育の目的は自己実現にあるので、「専業主婦の家庭でないと入れない学校なんてこっちから願い下げ」と、どうか言ってください。

 そんな例が日本の問題点を表しているように思います。教育レベルは高いけれど、個々人や教育者の意識が低いのでしょうか。ただ、それは「平和で幸せ」の裏返しなのでしょうけど。

 海原 私も後輩が「医師の知識は子育てに生かします」と言って仕事を辞めたときには複雑な気持ちになりました。男性医師が子育てやお受験を理由に「医師を辞めます」と言ったらびっくりされますが、女性医師が同様に辞めるのは不思議に思われないことが日本の社会構造の特徴のような気がします。

 アーノルド・ミンデルという社会学者は、社会には社会が持っている気が付きにくい文化的ゴーストがある、と言っていますが、私には日本の男女の役割分担意識は文化的ゴーストではないかと思います。

 内山 男性が家庭に目を向け、子育てや介護をわがこととして認識することなしには、女性の社会参加は難しいですね。男がマンモスを狩りに行き、女が木の実を摘んでいた時代ではないのですから。

(文 海原純子)


内山眞幸(うちやま・まゆき)

1984年東京慈恵会医科大卒。医学博士。放射線診断専門医、核医学専門医、第1種放射線取扱主任者。米ハーバード・メディカル・スクール放射線科核医学リサーチフェローなどを経て、慈恵医科大教授。専門は核医学一般、内照射療法。日本核医学会理事。日本小児放射線学会理事。茨城県原子力審議会委員。厚生労働省「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」委員。

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