Dr.純子のメディカルサロン
金メダリスト・小平選手を支援
相澤病院・相澤孝夫最高経営責任者
海原 私は産業医もしているのですが、企業で働く人たちに相互の信頼感が全然ないことに気付いてがくぜんとすることが少なくないです。売り上げが上がってない部門はひどく肩身が狭く、周囲から責められてしまう。
相澤 うちの病院だってそういうことがないわけじゃない。去年まで6人いた麻酔医が2人辞めちゃったんだよね。それでも救急医の中に麻酔標榜(ひょうぼう)医の資格を持っている医師がいて、週1~2回助けてもらいながら運営しました。
ただし、彼らはこのままだと相澤病院で必要な手術ができなくなる可能性があると考えて相澤病院認定の「麻酔支援看護師」をつくったんです。教育を受けた看護師を麻酔の専門医と指導医が認定し、手術中のチェックはもうその看護師に任せて患者さんの異常を見つけたら専門医に報告する仕組みにした。その結果、手術件数はむしろ増えたんですよ。
海原 新しいシステムが苦境の中から生み出されたわけですね。
相澤 そうです。そうしたら麻酔医たちが「うんと工夫して頑張ったのでボーナスをもらえませんか」と言うから、特別ボーナスをちょっと出しました。
海原 それはモチベーションが上がりますね。
相澤 やる気がある人たちが柔軟に考えて頑張って、もし結果を出せたらそれを「評価してほしい」と自由に言える雰囲気が大事だね。実際に評価されればモチベーションがすごく上がって、相澤病院にずっと勤めていたいと思ってくれるのではないかな。人間はみんなやる気を持っていて、自由なやりとりがあってこそ物事は動いていく。でも世の中はどんどん違う方向にいっている。
海原 息苦しい働き方を強いる社会になりつつあります。多様性重視と言いながら異なる考えを受け入れられない。評価の基準が一つしかない感じです。
相澤 管理社会に向かっている。働き方にしても、仕事で工夫を重ねて、働き過ぎたら休養するといった柔軟さがあればいいのだけど、ある一定のパターンで働いていればそれで全部済むと思うようになってきている。
海原 一定のパターンに収まらない人はかなり多いと思います。
相澤 そうそう。そういう人がいた方が組織や人は伸びるし面白い。それがすごく大事なところで、働く人がお互いにうまく作用するように導くことがマネジメントの重要なポイントだと思うんだよね。
(2018/04/28 16:00)