インタビュー

関節リウマチに新たな課題
全身の倦怠感や痛み

関節リウマチのさまざまな症状
 患者数が比較的多く、激しい痛みや継続的な炎症による関節の破壊と重い障害を招くため、大きな問題になってきた「関節リウマチ」=用語説明(1)=。近年は治療法の進歩で早期に発見して適切な治療を受ければ、関節部分の炎症を制御し関節破壊の進行を食い止める「寛解」=用語説明(2)=に至る可能性も増してきた。しかしその一方で、関節破壊を制御できたとしても、全身の倦怠(けんたい)感や体の各所の痛みを訴える患者もいることが分かり、治療上の新しい課題となっている。

 ◇日常生活に支障

 関節部の炎症が制御でき、関節の破壊が進まなくなると、多くの医師は「ほぼ治療目標を達成した」として、寛解と診断する。だが、そうしたケースを含め多くの患者が、残る痛みや倦怠感、こわばりなどの症状に悩んでいることが、製薬会社「日本イーライリリー」と全国のリウマチ患者で結成する患者会「日本リウマチ友の会」(東京都千代田区)の調査で判明。治療する医師と患者の間で、治療効果の評価についてずれがあることが見えてきた。

 調査は2017年7~8月、同会会員の関節リウマチ患者900人を対象に質問書を郵送、461人から有効回答を得た。それによると、回答者の92%が全身の痛みを、84%が倦怠感を日常的に感じていた。この痛みや倦怠感が「社会生活全般に影響を与えている」との回答がそれぞれ70%前後に上った。

 この傾向は、医師が寛解と診断した患者51人についてもほぼ同様で、86%が「痛み」を、67%が「倦怠感」を感じている、と回答。さらに約4分の1の患者が「自分は寛解していない、と思っている」と回答。半数近くの患者が痛みや倦怠感が日常生活の支障となっている自覚していた。

 ◇医師と患者の間にずれ

慶応大学医学部リウマチ・膠原病内科の金子祐子専任講師
 調査の実施と調査結果に基づいたパンフレットの作成に監修者として携わった慶応大学医学部リウマチ・膠原(こうげん)病内科の金子祐子専任講師は「これまで診療の中で抱いていた違和感が裏付けられた」と話す。リウマチ治療に長年携わってきた経験の中で、関節の炎症がコントロールされた状態でも、「どの程度の痛みやつらさを感じているかという治療効果の評価項目については、しばしば医師と患者の間で食い違いが生じていた」と打ち明ける。

 治療が奏功して関節の炎症が治まり、通常の検査でも炎症が認められなくなった。でも、痛みや倦怠感を訴える―。このような患者の中には、日常診療では使わない高精度の超音波エコーで関節に微細な炎症を発見できた例もあるという。

 「血液検査などで確認できない程度のわずかな炎症が体のどこかにあり、これが痛みの原因になることはある。関節に変形などの障害があれば整形外科による手術、ない場合は投与する治療薬の増量など治療の強化で全身の炎症全体の制御を目指す」と金子講師。

 ただ、こうした治療が効果的なケースもあれば、そうでない場合もある。患者一人一人の言葉や様子などを細かく診ながら、症状の緩和と有効な治療法を模索していく。金子講師は「リウマチ治療では長年、関節の炎症のコントロールを目指して患者も医師も頑張ってきたが、ある程度めどがついてきた現在、次の課題が見えてきたようなものだ。その意味では新しい課題に直面し始めたといえるのではないか」と言う。

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