市販薬にも禁止物質
スポーツファーマシストに相談を
今年8月、ロンドンで行われた陸上の世界選手権男子100メートル決勝で、過去2度ドーピング違反を犯したジャスティン・ガトリン(米国)が優勝したが、観客から大きなブーイングを浴びた。2020年東京五輪・パラリンピックを控え日本でも関心が高まるドーピングについて、国立スポーツ科学センター(東京都北区)メディカルセンターの薬剤師上東悦子さんに聞いた。
▽使用責任はすべて選手に
公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(東京都北区)ではドーピングに関する専門知識を持つ薬剤師を「スポーツファーマシスト」に認定、スポーツ選手が医薬品を選ぶ際に相談できるようにしている。
スポーツファーマシストの資格も持つ上東さんは「薬や食品などを摂取したことの責任はすべて選手自身に課されます。常に注意を払い、少なくとも薬に関しては必ず禁止されたものではないか確認してから使用することが大切です」と強調する。
▽うつ症状で自殺も
過去のドーピング違反では、疲労感をまひさせる麻薬や覚せい剤、興奮剤などが使われた。最近では筋肉増強効果のあるステロイドホルモンの摘発例が多い。
ドーピングには副作用という「代償」があることも忘れてはならない。例えばステロイドホルモンには女性の体毛を濃くするほか、月経不順や動脈硬化症、肝障害などさまざまな副作用がある。うつ症状を起こす場合もあり、自殺してしまったケースもあるという。
上東さんは「スポーツ選手には中学、高校の頃からアンチ・ドーピングへの理解を深めてほしいと思います。ドーピングを撲滅することが選手の負担を減らし、スポーツの価値を守る道です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2018/10/22 06:00)