治療・予防

大動脈解離、一刻も早い対応を
突然死の危険も

 前触れも無く背中や胸に激しい痛みが起きる大動脈解離は、突然死を招く危険な病気だ。日本での発症は1年間に10万人当たり3~5人とされ、世界でもトップクラスだという。森之宮病院(大阪市)心臓血管センターの大久保修和部長は「発症後2週間以内の急性期には、一刻も早く治療することが必要です」と強調する。

 ▽のたうち回る激痛

 心臓から全身に血液を送る大動脈の壁は内膜、中膜、外膜の3層構造になっている。大動脈の内膜に亀裂ができると、その裂け目から大動脈を流れる血液が勢いよく流れ込み、中膜層を2層に引き裂いてしまうのが大動脈解離だ。中膜層に「偽腔(ぎくう)」と呼ばれる空間ができ、そこに新たな血流が生じたり、血液がたまったりする。

胸や背中に強烈な痛み
 大きくなった偽腔に押されて本来の血流が悪くなると脳梗塞などを引き起こすほか、血管が破裂して体内で大量出血を起こし死亡してしまうこともある。原因は分かっていないが、高血圧や動脈硬化、遺伝などが関わっているといわれている。

 解離は突然生じて、胸や背中にのたうち回るような激痛が起こる。発症のピークは70代だが、あまり動脈硬化が進行していないような30~60代にも少なくない。女性よりも男性にやや多い傾向がある。

 ▽ためらわず119番

 大動脈解離は、心臓に近い「上行大動脈」に解離がある「A型」と、上行大動脈には解離が無い「B型」に分類される。大久保部長は「A型は死亡率が高く、解離を起こした部分やその付近の動脈を人工血管に取り換える緊急手術が必要です」と話す。

 B型の場合は、血流障害などが無ければ、降圧薬で血圧を下げて血管への負担を減らし、病気の進行を抑える。しかし、特に70歳以下で、解離の進行などの兆候がある場合には、足の付け根から細い管を挿入し、「ステントグラフト」というばね状の金属が付いた人工血管を患部に送り込み、内膜にできた傷をふさいで血管を補強する。

 症状が急激に表れる急性期を乗り越えれば、降圧薬による血圧管理や塩分制限などは引き続き必要だが、日常生活に戻ることは可能だ。大久保部長は「良好な回復のためにも、突然、胸や背中が激しい痛みに襲われたらためらわず救急車を呼ぶことが非常に大事です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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