足の悩み、一挙解決

第1回 足の医療、日本は100年遅れてます 足のクリニック表参道院長 桑原靖

 足の痛みや不調で困ったとき、どうやって対処していますか。関節が痛ければ整形外科、タコやウオノメなら皮膚科。整体やマッサージに行くという人もいるでしょう。でも、痛みや不調があっても、我慢してしまう人が一番多いのではないでしょうか。

 ◇欧米では当たり前

 欧米をはじめとした先進国では、足に何かトラブルがあれば、迷わず足専門クリニックに行きます。6年前、私が足専門クリニックを開業すると、日本在住の外国人たちが続々とやって来て、「やっと足を診てくれるところができた」と喜ばれました。彼らにとっては、足専門クリニックがないということは、「歯が痛いときに歯医者がない」のと同じ意味を持ちます。それくらい足専門のクリニックは人々の生活に当たり前のように存在しているのです。

 日本の足の医療は100年遅れていると言っても過言ではありません。文明開化以降、人々が靴を履くようになり、まだ歴史が浅いことも影響していると思います。足の医学が最初に発達したのはドイツ。欧州では16世紀ごろ、ヒールの高い靴を女性だけでなく、貴族の男性も履いていたので、トラブルも多かったのでしょう。そのような背景から、現在では足病専門医である「ポドローゲ」という国家資格があり、その資格を持った医師がいて、足全般の診療を行っています。

 米国では、約100年前に一般の医師免許とは別に、足病専門医の「ポダイアトリスト」という国家資格ができました。大学卒業後、ポダイアトリー専門の学校で3年間、足病医学を学んだ後、研修医として3年間の経験を積んで取得します。米国のほか、英国、ドイツ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどにも足病専門医の国家資格があり、足病は医学の独立した専門分野として確立しています。

 糖尿病の足切断に心痛め

 そんな日本で、なぜ私が足専門クリニックを始めようと思ったのか。私は医学部卒業後9年間、埼玉医科大学の形成外科で、フットケアが専門の教授の下で働いていました。そしてここでは、糖尿病のために足に潰瘍ができ、足を切断しなければならない人を数多く診てきました。

 最初は小さな足のトラブルだったはずなのに、もう後戻りできない状態になってから大学病院に紹介されて来る患者さんたち。その人たちを目の当たりにして、もっと早くから治療ができたら、こんなことにはならなかったのにという思いを強くしました。

 私の専門は形成外科ですが、医師になって最初に覚えるのが、巻き爪の手術です。この手術をした患者さんが、あまりに喜んでくれるので、「足の医療ってそんなに遅れているのだろうか」と思い、ネットで検索すると、医学的に正しくない情報が山ほど出てきて驚きました。根本的な解決方法を提示しないため、何度も再発して治らない患者さんがとても多いことも知りました。

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