治療・予防

「オーダーメード」に変わるがん治療
AI駆使した病院も―北川慶応大病院長講演

 慶応大学病院院長の北川雄光氏が2月上旬、「がん治療のこれから~期待と課題~」と題し、名古屋市で開かれた時事通信の内外情調査会で講演した。北川氏はがん治療の進歩を振り返り、ロボットが支援する手術や免疫療法、遺伝子情報を基にした治療などを紹介。「がん治療は個々の患者に合わせたテーラー(オーダー)メードの医療に変わってきた」と語った。さらに、人工知能(AI)を活用して医療従事者の負担を減らすとともに患者にもメリットをもたらす取り組みを説明した。

進歩した食道がんの手術

 ◇不治の病から助かる病へ

 日本人の死亡原因はがん(悪性新生物)が28・5%とトップだ。男性の62%、女性の42%ががんに罹患(りかん)するとされている。北川氏は「がんは『内なる悪魔』だ。原因としてお酒の過剰摂取や喫煙など生活習慣に関係する要因が挙げられることが多いが、生きている以上、がんになるすべての要因にさらされている」と言う。

 「私が外科医になった頃は、多くの患者さんに『がんは不治の病』と受け止められていた。しかし、今は患者の70~80%は治療で助かる」とし、患者に対する告知の重要性を指摘した。「小児がんの患者も含めて、がんであることを告知している。そうしないと、つらい手術や放射線などを受けられないからだ」

 ◇「カーナビ」で手術

 かつては危ない部分は全て手術で切り取った。乳がんだと乳房に加え、筋肉、リンパ節を切除する。右乳房を手術したある患者は、40年間にわたって手が腫れ、動かせない状態が続いたという。しかし、多くの患者が助かるようになり状況は変わった。乳房を温存し、形を保つために治療に形成外科医も参加する。「がんの治療を受けた後の生活の質(QOL)がより大切になった」と北川氏は強調した。

 治療法は以前に比べて大きく進歩した。北川氏が専門とする食道がんの腹腔(ふくくう)鏡手術は本来、神経や大きな血管を損傷する恐れがあるなど「熟練した外科医にとっても難しい手術」だ。今は、手術の前に患者の血管の状態を画像診断した上で、3Dの画面を見ながら手術を行う。「車のカーナビゲーションのように、行くべき道が示される」。近年は「ダビンチ」と呼ばれるロボット支援手術が普及し始めた。言ってみれば「小さな手」にあたる超小型のロボットが医師のコントロールで患者の体内を動き回り、がん組織を切除する。食道がんでは、首のところに3センチほどの穴を開けてロボットを入れて行う手術も開発されている。

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