一流に学ぶ 減量手術のパイオニア―笠間和典医師

(第12回)
「人のことは悪く言わない」
続く「格闘」の日々、家族と友人を大切に

 

 ◇「道険しくとも、笑いながら」

日本で減量手術の道を切り開く上で、数々の困難に直面し、向かい風にさらされた時期もあった。しかし、笠間氏は「あの時、逆風が吹かなければ、今の自分はない」と前向きに受け止める。そして、「人のことを悪く言わない」という矜持(きょうじ)を持ち続けてきた。 「自分のことを悪く言われて気持ちいい人っていないじゃないですか。他人をおとしめて自分が偉くなったように感じるのではなく、自分の評価が上がっていくのでないと意味がないと思うので」

アントニオ猪木氏の大ファンだ。笠間氏の腹腔鏡手術のトレーニングボックスには「闘魂」のシールが貼られている。「外科医は根性入れなければいけないことが多いですから、猪木さんのファン、多いと思いますよ」

 7~8年ほど前、大阪のホテルのバーで、偶然、本人に遭遇し、ファンだと名乗った。「すごく緊張して、どんな手術でも手が震えたことがないのに、名刺を渡す時、手が震えました」と笑う。

 猪木氏の「名言集」の中で、お気に入りの言葉は「道がどんなに険しくとも、笑いながら歩こうぜ」。肥満症の患者のために格闘する毎日は、まだ当分終わりそうにない。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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