一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏

(第12回)クリニックを移転=患者の利便第一に

 

 ◇母の死もきっかけに

 移転を決めた背景には、真駒内のクリニックの近くの施設に入所していた母が2015年に亡くなったこともある。父が12年前に亡くなってからは、一人っ子の石部氏が母の世話をしてきた。

 「何かあったらいつでも駆け付けられるようにと思っていましたが、これで真駒内にいなければならない理由はなくなりました」

 母は、大腿骨頸部(けいぶ)骨折車椅子の生活を余儀なくされていた。脚の不自由な女性に対する細かい心配りも、そんな母の姿を見てきたからなのかもしれない。

 移転して間もないクリニックは洗練されたインテリアでまとめられ、清潔感にあふれている。石部氏の清潔好きは中学生の頃から続いているという。

 「スケジュールを決めて勉強するようになってからは、自然と身の回りの整理整頓をきちんとするようになりました。すっきりと清潔にしていると幸運がやってくると、最近よくいわれますが、確かにその通りだと思います」

 休日は日曜日だけだが、その午前中を使って必ず自宅の掃除、洗濯、靴磨きをするという。クリニックでは、机の上に粗品のボールペンが何本も散らばっているなどということはない。額縁の裏側まできちんと掃除ができているかどうかチェックする。

 ◇絶えず向上を

 「ずっと同じことを続けていくだけではマンネリ化してしまいます。クリニックで提供する医療の質を維持するのはもちろん、それ以上のものを提供していかなければなりません」

 協力病院に新しいリハビリテーション施設を増設し、4月から理学療法士の数も増やした。入院期間を現在の10日間からさらに短縮するには、早期に重点的なリハビリを行う必要があるからだ。

 「人工股関節手術は、米国では日帰り手術なんです。私のクリニックでも、仕事などの都合でどうしても休めないという人には入院期間を4日間まで短縮しています。しかし、最終的に日帰り手術を目指すためには、現在、手術の翌日から歩くところを、当日から立って歩いてもらうようにしなければなりません」

 そのために、患者に痛みが出ないよう麻酔科の医師と麻酔の方法について検討中だ。石部氏は今年3月にも、「スゴ腕の専門外来 スペシャル」というテレビ番組で取り上げられた。予約の電話が引きも切らない状態になっても、あぐらをかかずにさらなる向上を目指す。それが患者の信頼につながっていく。

(ジャーナリスト・中山あゆみ)


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