一流に学ぶ 角膜治療の第一人者―坪田一男氏

(第4回)留学中にドライアイ発覚=生涯の研究テーマに

 「涙の量を測定するシルマーテストを受けたら、結果は0ミリ、涙が全く出ていないことが分かったんです」

ドライアイかどうかを判定するシルマーテスト

留学先のハーバード大で坪田氏の指導医が、ドライアイの研究のため、涙の量を測定するシルマーテストの正常値を調べていた。たまたま角膜外来にいた坪田氏は、健常者としてのデータを取らせてほしいと頼まれ、協力した。その結果、坪田氏自身がドライアイであることが分かった。

「目が疲れやすいと感じることはあったけど、目が乾いているという実感は全然なかったですね。耳や鼻は疲れないのに、どうして目が疲れるのかと患者さんに聞かれたことがあったけれど、教科書にも出ていないし、誰に聞いても分からなかった」

これが、ドライアイを生涯の研究テーマとして取り組むきっかけになった。

「大学の講義を聞いていて、目を開けているのがつらくなり、目を閉じてしまって寝てしまうことが多く、自分の根性が足りないのかと思ったこともありました。でも、ドライアイで目が疲れていたとしたら、僕と同じように悩んでいる人も多いはずだと気が付きました」

◇冷たかった反応

帰国後、師匠である慶応大の植村教授にドライアイの研究がしたいと話すと、「乾き目なんかを専門にしてどうする。もっと重大な病気がたくさんあるだろう」と軽くあしらわれてしまった。

しかし、既に坪田氏の心は決まっていた。「ドライアイの研究は現代人にとって重要だという直観を信じ、突き進むことに決めました。治療法を見付ければ、同じように困っている人たちの役に立つ。これが僕にとってのミッションだと思ったのです」

テーマを定めると、次々と研究のアイデアが湧いてきた。

「本を読むときは目を伏せているけど、机の上のパソコンを見るときは眼を見開いている。これで涙の蒸発量も違うのではないか」。調べてみると、パソコン作業をしていると通常は1分間に20回程度まばたきをしている人が5~7回に減ってしまうことが分かった。涙の蒸発量も目の開きの大きさで増えることを証明した。

 「まばたきをすることで目の表面に涙の膜ができます。まばたきの回数が減ると、目の表面が涙でコーティングされる回数が減ってしまう。さらに目を見開いて涙が蒸発すると、目は乾燥する、これが疲れ目の原因だという結論に達しました」

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