一流に学ぶ 角膜治療の第一人者―坪田一男氏
(第4回)留学中にドライアイ発覚=生涯の研究テーマに
◇一流医学誌が論文採用
論文を書いて国内の学会で発表したが、『坪田君、それでどうしたんだ』という素っ気ない反応しかなかった。専門誌に論文を投稿しても一向に採用されない。それならいっそのこと、世界的でトップの雑誌を狙ってみよう。最も権威の高い「New England Journal of Medicine」 に投稿したところ、即採用。パソコンを使うとなぜ目が疲れるかというテーマが世界的な話題になり、米紙ニューヨークタイムズの記者からも取材を受けた。
目が乾くと疲れるのなら、目の乾きを予防してやれば疲れないということになる。お風呂では目が楽だから、いつも目の周囲の湿度を上げてあげればいい。そこで、目の乾きを予防するサイドカバーと湿らせたスポンジを取り付けたドライアイ用眼鏡を発案した。坪田氏自身もこの眼鏡を長年愛用してきたが、以前の見た目はお世辞にも格好いいとはいえなかった。しかし、このアイデアが眼鏡メーカーの「JINS」の社長の目に留まり、2013年に「JINSモイスチャー」というスタイリッシュな保湿眼鏡として商品化された。
「嬉しかったですね。これなら誰でも恥ずかしくなく乾燥から目を守ることができます。どのくらいの保湿効果があるかもしっかりデータを出しました」
30年近い年月を経て進化した保湿眼鏡は、グッドデザイン賞を受賞し(14年)、人気タレントが広告で着用する製品にまで育った。
用語解説「シルマーテスト」 シルマー試験紙という大きさ7×50ミリほどのメモリの付いた細いろ紙をまぶたにはさんで、涙がしみこんだところの数値を読み取って、涙の量を計測する検査。5分間に出る涙の量が10ミリ以上なら正常、5ミリ以下だとドライアイが疑われる。
→〔第5回へ進む〕血清点眼でドライアイ治療=世界初のモデルマウス誕生
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(2017/08/08 14:31)