一流に学ぶ 日本女性初の宇宙飛行士―向井千秋氏

(第9回)シャトルでの実験、分刻み =宇宙メダカ、話題さらう

 ◇無重力、実験で目の当たり

宇宙実験のためスペースシャトルに乗せられる直前のメダカ(1994年7月、米国)
 コロンビア号には地球の生命が宇宙に出かけた時に受けるさまざまな影響を解明するため、メダカやイモリ、金魚など数々の生き物が持ち込まれた。

 「メダカ1匹をとっても、研究者が宇宙旅行向きのメダカを何年もかけて育てたのを預かって乗せているわけだから、死んでしまったりしないかどうか気が気ではなくて。最初に卵がかえったのを見つけた時は、本当にうれしかった」

 実験では43個の卵が確認され、8匹がふ化。無重力環境でも受精、産卵が行われることが分かった。「宇宙メダカ」の誕生は、当時日本中の話題になった。

 向井氏が特に感動したのは、材料実験での無重力の影響を目の当たりにした時だ。

 「地球上だと水に油を混ぜると2層に分かれるでしょう。さらに水を注ぐと比重のある水が落ちて2層になる。ところが宇宙だと重さがないから、水、油、水の3層ができるんですよ。これを撥水(はっすい)性のある容器に入れると、親和性のある油が容器にべったりくっついて、はじかれた水が内側に入る。地球上では内側と外側に分かれるなんてありえないから、そういうことを観察できたのは、ものすごく面白かった」

 地上の天候不順のため帰還が1日延びたものの、驚きと発見の連続で15日間の飛行はあっという間に過ぎていった。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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