女性アスリート健康支援委員会 五輪と女性スポーツの歩みを見つめて

広がる舞台、医学の知識を支えに
国の拠点充実見届け20年東京へ

 ◇健康対策「特に問題なのは10代」

 13年度に構築した「LiLi 女性アスリートサポートシステム」の運用はその一つだ。トップアスリートが登録し、月経周期や体重、コンディションなどのデータを入力すると、婦人科医やトレーナー、栄養士、心理スタッフら専門家のアドバイスを受けられる仕組み。また、成長期のジュニアアスリートを対象に、医・科学的なサポートプログラムを用意し、本人や家族、指導者らの講習会も開催する。

 「特に問題なのは10代の選手たちです」と、女性アスリートの健康問題を説明する川原貴氏
 「妊娠期や産前・産後、子育て期のトレーニングや栄養、心理面などについてのサポートも行うようになりました」と川原氏。同センターには託児所も設けられ、トップ選手の利用が可能だ。

 ただ、川原氏は「トップ選手より下のレベルの選手へのサポートは、ほとんど行われていない。特に問題なのは10代の選手たちです」と、女性アスリートの健康問題をめぐる現状を説明する。

 14年の時点で、同センターと日本産科婦人科学会が大学の女子選手を対象に実施したアンケート調査によると、無月経の割合は日本代表レベルで6.6%、全国大会レベルで6.0%、地方大会レベルで6.1%。競技レベルを問わず同じように、運動をしない一般大学生の1・8%よりも高かった。無月経と月経不順を合わせた月経周期異常の割合も、いずれも4割前後で大差なかった。

 日本産科婦人科学会や日本スポーツ協会など5団体でつくる女性アスリート健康支援委員会が発足したのも14年だ。正しい医学的知識を広め、選手たちの健康を守り、競技力向上につなげるのが目的で、選手や家族はもちろん、産婦人科医やスポーツ指導者、学校の養護教諭や校医らの啓発活動を進める。10代の選手をめぐっては生涯の健康を守るため、低体重や無月経などを放置せず、20歳ごろまでに適切な骨量を確保する重要性を強調する。

 ◇五輪参加、女性が半数の時代に

 柔道の世界選手権の男女混合団体で連覇した日本の選手たち。新種目として実施される東京五輪でも金メダルの期待が懸かる=2018年9月27日(バクー時事)
 現在、川原氏は日本スポーツ協会のスポーツ医・科学専門委員長でもある。「国体に出場する女子選手のメディカルチェックで健康問題を拾い上げ、専門家につなぐサポート体制を5県でモデル的に実施し、全国に広めようとしています。それができれば学校の部活で問題があった時に対応できる仕組みをつくらないと。そのためにも健康支援委員会の活動で、いろいろな人に正しい知識を知ってほしいですね」と話す。

 2020年の東京五輪で実施されるのは33競技339種目。「男女平等」を掲げる国際オリンピック委員会(IOC)の理念を反映し、男女混合種目も積極的に採用され、女性の参加率は史上最高の48.8%になる。(水口郁雄)


◇川原貴氏プロフィルなど

◇「名花」生んだ64年東京は遠く(五輪と女性スポーツの歩みを見つめて・上)

◇新時代、女子マラソンの光と陰(五輪と女性スポーツの歩みを見つめて・中)



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