「医」の最前線 「新型コロナ流行」の本質~歴史地理の視点で読み解く~

第6波収束への道
~GW、久しぶりの楽しい休日も~ (濱田篤郎・東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授)【第40回】

 新型コロナウイルスの第6波の流行がようやく収束に向かっています。「まん延防止等重点措置」を取っている自治体でも、解除の動きが見られるようになりました。その一方で、感染者の減少スピードは遅く、この時期に措置を解除することに不安を感じる声も数多く聞かれます。今回は第6波の現状と今後の対応について解説します。

緊急事態宣言中、ゴールデンウイークを迎えた清水寺の参道=2021年05月04日

緊急事態宣言中、ゴールデンウイークを迎えた清水寺の参道=2021年05月04日

 ◇流行の長期化

 第6波はオミクロン株による流行で、日本では2022年の1月上旬から感染者の急増が始まりました。それに応じて多くの自治体が「まん延防止等重点措置」を発動し、東京都では1月21日から飲食店の時短営業やイベント開催の制限などの措置が取られています。

 その後、2月上旬には第6波がピークとなり、1日の感染者が10万人を超える日もありました。これだけ多くの感染者が発生したのは、オミクロン株の感染力の強さと共に、感染が拡大しやすい真冬の流行だったことも影響しています。一方、重症者数はある程度抑えられており、病床が逼迫(ひっぱく)するような事態はあまり起こりませんでした。

 2月中旬以降は感染者が減少していきますが、その減少のスピードは遅く、3月中旬になっても1日に5万人前後の感染者が発生しています。こうした流行の長期化により、重症者数も次第に増加していきました。

 2月末からは、「まん延防止等重点措置」を解除する自治体も出てきましたが、3月中旬の時点で東京都や大阪府など18の自治体が同措置を継続しています。

 ◇減少スピードが遅い原因

 21年夏に起きた第5波の流行は、ピークを越えてから短期間で収束しました。あの時は、感染が拡大しにくい夏であったことや、ワクチン接種が国民の間で広がっていたことが急速な収束を起こしたと考えられています。

 その一方で、第6波は冬の流行であることや、ワクチンの追加接種が遅れていることが長期化している原因に挙げられます。さらに、第6波ではピーク時の感染者数が膨大だったことも大きな原因になるでしょう。第5波のピーク時には1日の感染者が2万5000人ですから、第6波ではその4倍の感染者が発生したことになります。収束するまでには、より長い時間がかかるのです。

 これに加えて、米国や英国でのオミクロン株の流行状況を見ると、現在の日本の感染者数に近い数で減少傾向が止まっています。オミクロン株は感染力が強いだけに、流行の長期化は避けられないのかもしれません。

 ◇世界は対策緩和の方向

 このように、日本だけでなく欧米諸国でもオミクロン株の流行が長期化する傾向はありますが、多くの国々が流行対策の緩和を始めています。米国は全ての州で屋内のマスク着用義務を解除しました。英国では新型コロナ対策に関する全ての法的規制の撤廃を2月末に発表しました。

 流行が完全に収束していなくても対策を緩和するのは、オミクロン株による重症化の頻度が低いためです。また、ワクチンの追加接種が広がれば、感染の拡大を防げるだけでなく、重症化率をより低くすることができます。このようなオミクロン株の特徴やワクチンの効果を元に、各国が社会や経済の再生に向けてかじを切ったのです。

 こうした世界的な動きに呼応するように、日本政府も3月11日に「まん延防止等重点措置」を解除するための基準緩和を発表しました。すなわち、医療の逼迫がなければ、感染者数が高止まりの状態にあっても措置を解除するというものです。この基準に従えば、ほとんどの自治体で、期限になっている3月21日までには措置を解除できるでしょう。

イタリア・ローマで記念撮影する人々=2022年02月11日AFP時事

イタリア・ローマで記念撮影する人々=2022年02月11日AFP時事

 ◇過去2年間の苦い経験

 この基準緩和のニュースに不安を感じた人も少なくないはずです。第6波の流行が長期化している状況下、措置を解除したら再燃するかもしれない。そんな危惧もあるでしょう。

 さらに、私たちは過去2年間にわたって、「4月の流行拡大」という苦い経験をしてきました。流行1年目の20年4月には、中国から拡大してきたウイルスが国内にまん延し、初めて緊急事態宣言が発出されました。流行2年目の21年4月には、英国から波及してきたアルファ株が流行を拡大させています。

 しかし、過去2年間の出来事は、新型コロナの初めての流行や、変異株の侵入という事情で起きており、4月が流行の拡大しやすい時期というわけではありません。季節的には春を迎えて、感染が拡大しにくい時期になるのです。

 このような状況から、解除基準を緩和した日本政府の対応は妥当な判断だと思います。これは日本の社会や経済を再生するためにも必要な対応なのです。

 ◇「措置の解除=第6波の収束」ではない

 ただ、「まん延防止等重点措置」が解除されたとしても、それは第6波の収束ではありません。おそらく、4月末までは流行が長期化する可能性があります。特に、日本では4月から新年度になるため、人の移動や行事が増えることに十分な注意をしなければなりません。第6波の渦中に年度が改まるわけですから、個人の予防対策は今までと同様に続けていくことが必要です。

 さらに、ワクチン追加接種の動きもより進める必要があります。3月中旬の時点で、日本での3回目の接種率はまだ2割台ですが、5月の連休までには接種率5割以上を目標にすべきだと思います。

 こうした個人による予防対策の継続とワクチン追加接種の促進が達成されれば、今年の5月のゴールデンウイークは久しぶりに楽しい休日になることでしょう。

 ◇出口戦略への動き

 第6波が収束した後は、新型コロナ流行からの本格的な出口戦略を実行する時期になります。新型コロナウイルスと共存しつつ、日本の社会や経済を再生する動きを加速させていかなければなりません。

 このためには、第6波を早めに収束させたいところですが、懸念すべき事態が起きつつあります。それは、オミクロン株の中でも感染力の強いBA.2が増加傾向にある点です。まだ日本での検出数は多くありませんが、これが増えてくると第6波がさらに長期化する可能性もあります。今は、その監視を強化しつつ、出口戦略に向けて進む時期なのです。(了)


濱田 篤郎 特任教授

濱田 篤郎 特任教授

 濱田 篤郎 (はまだ あつお) 氏

 東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授。1981年東京慈恵会医科大学卒業後、米国Case Western Reserve大学留学。東京慈恵会医科大学で熱帯医学教室講師を経て、2004年に海外勤務健康管理センターの所長代理。10年7月より東京医科大学病院渡航者医療センター教授。21年4月より現職。渡航医学に精通し、海外渡航者の健康や感染症史に関する著書多数。新著は「パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策」(朝日新聞出版)。

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