「医」の最前線 「新型コロナ流行」の本質~歴史地理の視点で読み解く~
マスク緩和は段階的に (濱田篤郎・東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授)【第58回】
◇2段階の緩和方法
こうしたマスク着用の推奨場面を考えた上で、あとは個人がそれぞれ判断するわけですが、過去3年にわたり実施してきた習慣を簡単に変更できるものではありません。そこで、「準備期」と「実施期」の2段階に分けてマスク着用を緩和する方法を紹介します。
「準備期」というのは3月13日から新型コロナが5類に移行する5月8日までの約2カ月間です。この期間、屋内でマスクを外すことに不安のある人は着用したままでもいいと思います。もし周囲でマスクをしない人が増えてきたら、少しずつ外す時間を長くしてみましょう。例えば、会話をするときだけマスクをするという対応もあります。この時期は年度末にかかり、人流増加や歓送迎会などで流行が再燃する可能性もあり、徐々にマスク着用を緩和することは流行状況にも良い影響を与えると思います。
そして5月8日以降は「実施期」で、本格的にマスクを外す生活に入ります。ただ、この時期でも不安のある人は無理に外す必要はありません。ゆっくりとご判断ください。
今回の政府のマスク対策緩和は、マスクを着用しなくても感染リスクが低いことを示していますが、マスクを外すことを国民に要求しているものではありません。筆者は「マスクを着用する人」と「マスクを外す人」が共存できる社会にすることが大切だと思います。また、こうした対策緩和は流行が落ち着いている状況で行うものであり、流行が冬場などに拡大すると、再び強化されることも想定しておかなければなりません。いずれにしても、マスクのない生活が日本でも現実のものになってきました。(了)
濱田特任教授
濱田 篤郎(はまだ・あつお)氏
東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授。1981年東京慈恵会医科大学卒業後、米国Case Western Reserve大学留学。東京慈恵会医科大学で熱帯医学教室講師を経て、2004年に海外勤務健康管理センターの所長代理。10年7月より東京医科大学病院渡航者医療センター教授。21年4月より現職。渡航医学に精通し、海外渡航者の健康や感染症史に関する著書多数。新著は「パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策」(朝日新聞出版)。
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(2023/03/02 05:00)
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