「医」の最前線 感染症・流行通信~歴史地理で読み解く最近の感染症事情~
新型コロナ5年目の流行予測
~季節性伴う感染拡大への対応~ 東京医科大特任教授・濱田篤郎【第2回】
コロナが5類に移行する前の繁華街の様子。多くの人がマスクを着用していた(2022 年3月、東京・銀座)
◇第何波という呼び方の問題
このように過去4年の経験から、新型コロナの流行は今後も季節性を伴って続くことが予想されます。こうした流行は第何波という名称でも呼ばれており、今回の流行は第10波になります。私もメディアの取材などで、この名称を使うことがありますが、今回を最後にした方がよいのではないかと考えています。
第何波という呼び方は、新型コロナが拡大した当初、その流行が短期間で終息することを期待して付けられたものです。それが今後も長期間続くとなれば、どこかでその呼び方を終わらせる必要があります。また、流行の規模を過去と比較する場合、たとえば「第8波と同程度」と言われても、国民の皆さんにはなかな理解できないと思います。
そこで、たとえば現在の流行であれば「23~24年冬の流行」という名称を用いることを提案します。次の夏に流行が起きれば「24年夏の流行」になります。この方が、現在の流行規模などを過去と比較しやすく、適切な感染対策を取るにも便利です。
◇4年たっても新型か
もう一つ検討すべきは、「新型コロナウイルス感染症」と言う名称です。このウイルスが流行し始めた2019年12月の時点では、病原体が新しいコロナウイルスだったので「新型」という名称が付けられました。しかし、既に4年が経過しているのに「新型」のままでいいのでしょうか。今後、さらに新しいコロナウイルスが流行する可能性もあります。
WHOは20年2月の時点で、病気の名称を「COVID-19」(Corona virus disease 2019)、病原体名を「SARS-CoV-2」(SARS corona virus2)に決めました。一方、日本では同時期に、厚生労働省が「新型コロナウイルス感染症」という名称を正式に採用しており、現在も感染症法ではこの名称が使われています。
そろそろ日本でも「COVID-19」を正式病名にし、その病原体名を「COVID-19ウイルス」などにすることが必要だと思います。
◇南アフリカからの新たな脅威
このように過去4年の経験から、新型コロナの流行は予測がある程度可能になってきました。今後は中長期的な対応を適切に行うため、病名や流行期の名称などの検討が課題になります。
最後に、今年の流行に影響するかもしれない新たな変異株の発生を紹介しておきます。23年9月ごろから、南アフリカではBA.2.87というオミクロン株の派生型が検出されています。まだ検出数は少ないのですが、従来のオミクロン株に比べて、ウイルス全体の変異箇所が100カ所以上と桁違いに多くなっています。詳細な情報はこれからですが、アフリカ南部からは過去にベータ株やオミクロン株などが発生しており、今後、監視を強化する必要があります。
5年目を迎えても新型コロナの流行からは目が離せません。(了)
濱田特任教授
濱田 篤郎(はまだ・あつお)
東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授。
1981年東京慈恵会医科大学卒業後、米国Case Western Reserve大学留学。東京慈恵会医科大で熱帯医学教室講師を経て2004年海外勤務健康管理センター所長代理。10年東京医科大学病院渡航者医療センター教授。21年4月より現職。渡航医学に精通し、海外渡航者の健康や感染症史に関する著書多数。新著は「パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策」(朝日新聞出版)。
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(2024/02/16 05:00)
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