こちら診察室 タンパク質にまつわる栄養の話

タンパク質の基礎知識
~上手に取るこつは~ 【第1回】

 昨今、「『タンパク質』を知らない人はもはやいないのでは」と思えるほど、世の中にタンパク質という言葉や商品があふれています。そこで読者の皆さんに質問です。タンパク質って何でしょう? 改めてこう聞かれると答えられない方のために、タンパク質とは何かを簡単に解説します。

アミノ酸が2個以上結合したのがペプチドだ

アミノ酸が2個以上結合したのがペプチドだ

 ◇アミノ酸の種類

 タンパク質を英語表記すると「Protein(プロテイン)」ですが、これは「第一の物」という意味を持つギリシャ語の「Proteios(プロティオス)」が語源となっています。

 タンパク質は、たくさんのアミノ酸がペプチド結合でつながった高分子化合物です。その構造は、図1の通りにアミノ酸が2個以上結合した物がペプチド、アミノ酸が約80個以上結合した物がタンパク質です。これで「プロテイン」「ペプチド」「アミノ酸」の関係性がお分かりになったでしょうか。

 次に、タンパク質を構成しているアミノ酸には20種類があります。そのうち体内で合成されず、必ず食物から取り込まなくてはならない9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」、体内で必要な量が合成される11種類のアミノ酸を「非必須アミノ酸」と言います。タンパク質は構成するアミノ酸の数や種類、結合の順序によって種類が異なり、さまざまな働きを有することになります。

 必須アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンです。非必須アミノ酸は、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、システイン、チロシン、プロリン。そして、タンパク質を構成しないアミノ酸(遊離アミノ酸)も、オルニチン、シトルリン、GABAなど多数存在します。

身体をつくり、免疫反応などにも関与する

身体をつくり、免疫反応などにも関与する

 ◇タンパク質の働き

 タンパク質の最も大切な働きは身体をつくることです。私たちの身体の主成分はタンパク質で、男性では16〜18%、女性では14〜16%がタンパク質で占められています。表1は、身体を構成するタンパク質の一部です。筋肉や臓器を構成しているだけでなく、生体機能を担う物質の材料となっていることが分かると思います。

 次に大事なのはエネルギー源となることです。タンパク質を「三大栄養素」と呼ぶことは家庭科の授業で習ったことでしょう。これは、タンパク質が炭水化物(糖質)や脂質と同様に、エネルギー源として利用されるからです。特に、飢餓状態など、食物からの摂取エネルギーが不足した際には、生命を維持するために身体を構成しているタンパク質を分解してエネルギー代謝に利用します。

 ◇分解と合成を繰り返す

 食事から取ったタンパク質は分解され、アミノ酸やアミノ酸2~3個から成るペプチドとして小腸から吸収されます。吸収されたアミノ酸は一定量が体内に蓄えられます。これをアミノ酸プールと言います。プールされなかった分は排せつされます。私たちが泳ぐプールを想像してもらうと分かりやすいかも知れません。プールに水を入れ過ぎるとあふれますよね。通常、健康な成人の場合は、タンパク質の摂取量と排せつ量がほぼ等しい状態になります。

 蓄えられたアミノ酸は、表1のようなタンパク質を合成します。さらに、組織を構成していたタンパク質は分解され、この合成と分解が常に繰り返されることで私たちの身体のタンパク質は新しくなっていきます。これが新陳代謝です。

 ところで、コラーゲンをたくさん取ると身体のコラーゲンが増えるかのようなCMをよく目にします。これまでの説明の通り、口から食べたタンパク質はアミノ酸に分解されて吸収された後、体内でまたタンパク質を合成します。もしくは、排せつされます。つまり、タンパク質の1種であるコラーゲンを食べても、アミノ酸まで分解されて吸収されるために、吸収後にもう一度コラーゲンに合成されるかどうかは分からないのです。

上手なタンパク質摂取のために活用する

上手なタンパク質摂取のために活用する

 ◇無理なくタンパク質摂取を

 タンパク質は、肉類や魚類、卵類、乳類、大豆製品などに多く含まれています。これらを上手に食べるこつを紹介しましょう。まず、質の良いタンパク質を含む食品の摂取についてです。食品に含まれるタンパク質の質は、アミノ酸スコア(9種類の必須アミノ酸のうち、最も含有量が少ない必須アミノ酸レベルで評価したもの)で評価されます。このアミノ酸スコアが100の食品は、どの必須アミノ酸も含有量が多く、バランスが良いことになります(表2)。ご飯やパンのアミノ酸スコアは低いのですが、アミノ酸スコアが高い食品と組み合わせて食べることでアミノ酸摂取量を補うことができます。

今村佳代子さん

今村佳代子さん

 しかし、いくら質の良いタンパク質源でも、一つの食品から1日に必要なタンパク質全てを摂取しようと思うと、食べ切れなかったり、栄養バランスが崩れたりしてしまいます。例えば、体重60キロの人がサンマだけで必要なタンパク質を取ろうとした場合、1日にサンマを4匹食べなければなりません。これは、ほとんどの人にとっては無理でしょう。では、どうすれば良いのでしょうか。お勧めは、毎食、主菜(肉、魚、卵をメインとしたおかず)を食べ、たまに牛乳や納豆を加えることです。そうすると、無理なくタンパク質が食べられます。ここで注意したいのは朝食を抜いたりする欠食です。1回の欠食でタンパク質源を食べる機会を1回失ってしまうからです。欠食が習慣となっている人は、ぜひ改善をお願いしたいと思います。(了)

 今村佳代子(いまむら・かよこ)
 管理栄養士・公認スポーツ栄養士。鹿児島純心女子大学・看護栄養学部健康栄養学科准教授。日本女子大学家政学部食物学科卒業。病院勤務を経て同大学大学院修士課程修了。現在は大学で管理栄養士養成に従事する傍ら、高校生・大学生アスリートへ栄養サポートを実施する。Webサイト「アスレシピ(日刊スポーツ新聞社)」に『KAGOSHIMA×食』グループでコラム・レシピを執筆。


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