こちら診察室 タンパク質にまつわる栄養の話

悩み尽きない子どもの食生活
~相談例から考える~ 第6回

 ◇歯の事情が影響も

 子どもの歯の事情が影響している可能性もあります。

 乳歯は生後6~7カ月より生え始め、2歳半くらいで20本が生えそろいます。ただ、大人にはある奥歯3本(第1~3大臼歯)がありません。そのため、塊の肉をかみしめることは困難です。また、6歳頃からは歯の生え変わりが始まり、10代半ばまで続きます。子どもの中には、歯がグラグラしていたり、永久歯が生えてきていなかったりするために、かみ切れない、かみしめられないなど、食べ物を思うように食べられない場合もあります。料理に手をかけなければならないことに大変さを感じるかもしれませんが、子どもの歯の状態をチェックし、食べやすいアレンジを試みることも一つの手段です。

 ◇タンパク質の過剰摂取

 Q タンパク質源が大好きで食べ過ぎているかもしれません。制限した方がいいでしょうか?(10歳児・保護者)

 摂取不足を心配される方がいらっしゃる半面、食べ過ぎ、つまり過剰摂取を心配されている保護者や先生から相談をお受けすることもよくあります。

 まずは、子どもの身長と体重をチェックしてみてください。幼児はカウプ指数、小学生はローレル指数、高校生になればBMI、母子手帳などに掲載されている成長曲線(参考)など、体格を評価してみましょう。基準から大幅に外れて、肥満傾向にある場合は食生活の改善(あえて制限とは言いません)が必要になりますので、かかりつけ医や管理栄養士、栄養教諭、養護教諭らと相談しながら、今後について考えていきましょう。

 一方で、身長・体重が基準範囲内であれば、現在の食べる量を深刻に悩む必要はありません。たくさん食べる原因として、次のようなことは考えられませんか?

 ・遊びや習い事、部活などで活発に動いていて運動量が多い:エネルギー消費量が多いため、その分、たくさん食べる必要があります。逆に食べないと、身長が伸びない、疲れやすい、だるい、などといった問題が生じてしまいます。

 ・食事の時間が短い:満腹感を感じずに食べている可能性があります。食事時間が短くなる理由の一つとして「よくかまない」ことが挙げられます。これを放っておくと、かまずに早食い→満腹感を感じないからたくさん食べる→消化・吸収が悪い→おなかを壊す→食べられない、という悪循環に陥ることもあります。

 これらの原因としては、前述のように歯の状態が影響している可能性もありますし、かむ習慣が身に付いていないことも考えられますので、子どもの歯の状態に合わせた物の提供と、よくかむように声掛けをしてみてください。

 今回は、子どものタンパク質の摂取不足と食べ過ぎに関する解説をしてみました。共通の悩みが少しでも軽減されるきっかけになれば幸いです。(了)

 今村佳代子(いまむら・かよこ)
 管理栄養士・公認スポーツ栄養士。鹿児島純心大学・看護栄養学部健康栄養学科准教授。日本女子大学家政学部食物学科卒業。病院勤務を経て同大学大学院修士課程修了。現在は大学で管理栄養士養成に従事する傍ら、高校生・大学生アスリートへ栄養サポートを実施する。Webサイト「アスレシピ(日刊スポーツ新聞社)」に『KAGOSHIMA×食』グループでコラム・レシピを執筆。

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