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糖尿病で目が悪くなること、知っていますか? 【第6回】

春や秋に意識的に運動することが大事です(イメージ)

春や秋に意識的に運動することが大事です(イメージ)

 ◇現代人は運動不足

 国が出している健康日本21のデータによると、週に2回以上、1回当たり30分以上の運動をしている人の割合は令和元(2019)年度データで28.7%とのことです。国は2032年までにこれを40%まで引き上げることを目標にしています。

 COVID-19によるステイホームも糖尿病の方には大きな負担でした。家にいるので運動量は減少します。さらに間食の機会も増えます。定期通院も止まり、投薬の管理も難しくなっていたことでしょう。COVID-19が5類感染症に移行してまだ1年半程度ですので、コロナで病状が悪くなり、まだまだ安定していない方も多いのではないでしょうか。

 また昨今の温暖化の結果、夏は年々酷暑となってきています。外に出ての運動が難しく、夏の暑さがフレイルにつながるという指摘も出ています。春・秋のうちに意識的に運動を行うということも大事です。

 ◇食べ物によって血糖値の上がり方に差がある

 Glucose index(GI)という言葉があります。これは血糖値の上がりやすさの指標です。血糖値が急激に上昇すると体はインスリンを多量に必要としますので、GI値が高い食材は体にとって負荷が高いことになります。いわゆる甘いものやデンプン質の多いものが高GIとされています。特に甘い飲み物は糖の吸収効率が高く、危険です。ジュースを頻繁に飲む人は糖尿病になりやすく、これをいわゆるペットボトル症候群と呼びます。

 歴史のお話になりますが、平安貴族の藤原道長は糖尿病で晩年は失明状態だったそうです。原因としては過食もあるでしょうが、当時のお酒(どぶろく)を飲み過ぎていた可能性があると言われています。お酒は糖の発酵で生まれますので、蒸留酒でない醸造酒は基本的に糖分が多く含まれます。ジュースやお酒は要注意です。

 糖尿病と共に生きていく

 食べることは喜びであり、かつ必要なものです。過度の心配はせず、まず自分の状態を健診で確認しながらいけばよいでしょう。さらに糖尿病になっても、食べ物によるGI値などの食べ方の知識を得て、かつ運動を行えば対策は可能です。特に運動は、食べる権利をつくってくれます。病気を知り、それに対する行動を行えば、より良い人生が待っている、これは健康のための全てに言えることです。さらにそれを楽しみながら行っていけるといいですね。(了)

岩見久司医師

岩見久司医師

 岩見久司(いわみ・ひさし) 大阪市大医学部卒、眼科専門医・レーザー専門医。 大阪市大眼科医局入局後、広く深くをモットーに多方面に渡る研さんを積む。ドイツ・リューベック大学付属医用光学研究所への留学や兵庫医大眼科医局を経て、18年にいわみ眼科を開院。老子の長生久視(長生きして、久しく目が見えている状態)が来る時代を願い、22年に医療法人社団久視会に組織を変更した。現在は多忙な診療を行う傍ら、兵庫医大病院で非常勤講師として学生や若手医師に対して教鞭をとる。

 

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