こちら診察室 あなたの知らない前立腺がん
早期の前立腺がんに対する放射線治療 第6回
◇再発した場合の治療
前立腺がんに対する放射線治療を行った後、再発する場合があります。このような場合、一般的に、薬物療法(内分泌療法)が実施されてきました。しかし、薬物療法は徐々に効果が薄れていくことが多いため、改めてがんを根絶するための治療が実施されるようになっています。具体的には、放射線治療後の前立腺を手術で摘出する方法、また、再発したがんを集中的に破壊する方法です。前者の手術療法は、放射線治療後に前立腺と周囲の組織がくっついてしまうこともあり、どんな医師でも簡単にできるものではありません。術後の尿失禁もやはり課題です。
後者は、救済がん標的局所療法(サルベージ・フォーカルセラピー)と呼ばれ、私たちの施設で積極的に取り組んでいる治療法です。救済がん標的局所療法では、再発した際に、画像診断や生検によって、がんの場所を診断し、そこを狙い打ちする形で治療を行います。具体的には、高密度焦点式超音波療法(high-intensity focused ultrasound, HIFU [ハイフ])により、がんの場所を狙って組織を破壊します。前立腺内部のがんを含む一部分の組織が破壊されるだけなので、治療は1時間程度で終わりますし、治療後の尿失禁も少ないのが特徴です。ただし、この治療を受けるには、再発したがんが、前立腺の半分以内にとどまっていることが条件になります。放射線治療後に再発しても、あきらめないで根治を目指す治療法の一つとして期待されます。
前立腺がんに対する放射線治療について説明しました。高精度で効果的な治療技術が進歩し、さらに再発時にも新たな治療が試みられるようになっています。(了)

小路直教授
小路 直(しょうじ・すなお) 東海大学医学部腎泌尿器科学領域教授 2002年東京医科大学医学部医学科卒業、11~13年南カリフォルニア大学泌尿器科へ留学、東海大学医学部外科学系泌尿器科学准教授などを経て24年から現職、2019年 日本泌尿器科学会 坂口賞, 日本泌尿器内視鏡学会 阿曽賞。米国泌尿器科学会、日本泌尿器科学会などに所属。著書に「名医に聞く『前立腺がん』の最新治療」(PHP出版)など。
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(2025/03/06 05:00)
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