ダイバーシティ(多様性) 当事者が見た色覚特性のキラキラした世界
知識・経験で色を認識
~手法さまざま、代替策に活路も~ 【第4回】
「色覚特性を持っているけど、デザイン関係の仕事に就きたい」と、今のお店で眼鏡選びの相談を受けたことがありました。相談者の具体的な考えが分からないまま終わってしまった案件でした。デザインの仕事という漠然とした希望にとどまり、結局のところ何をしたいのか定まっていなかったので、中身のあるやりとりができませんでした。もしかしたらウェブデザインやゲームデザインだったのでしょうか。デザインの仕事といっても膨大な数があります。建築、家具、モデリング、雑誌構成もそうです。近代建築の巨匠とも称されるスイス生まれの建築家、ル・コルビュジエの建物を見ると、基本は石材やコンクリートが主で、多くはカラフルとは言えません。
ですから、相談者にはこう伝えました。「色を扱わないデザインは山のように存在しています。色が分からないと難しい分野のデザインをやりたいのか、他に代替案が何かないのかなどについてもう一度よく調べて考えてみてください。眼鏡に頼るのはその後でよいと思います。それからこれは私の希望ですが、無事にデザインの仕事に就けたら、色覚特性を持っていたからできた、色覚特性を持つ人にも分かりやすい、そういったデザインを実現してくれるとうれしいです」。その後は音信不通なので、うまく代替案が見つかったのだと考えることにしています。知らないおじさんに説教されただけと思っていないよう願います。
次回は私のいとこに当たり、私と同じ色覚特性を持っている人のお話をさせてください。舞台は皆さんもよく知っているカラフルな料理、フレンチの世界。ホテルのレストランで料理長を務めている「まー君」の物語です。色覚特性がありながらフレンチの料理人として活躍するすごさを紹介したいわけではありません。これから先の色覚特性の未来と可能性が垣間見えたお話をするつもりです。遺伝に関することにも触れながらになるので、少し長めになると思いますがお付き合いください。お楽しみに!(了)
〔お断り〕この連載では、文章の趣旨を的確に伝えるため、現在は使用を控えるようになった「色盲」「色弱」という言葉を必要に応じて用いています。
長瀬 裕紀(ながせ・ゆうき) 1級眼鏡作製技能士。過去に量販眼鏡店に就職するも勉強不足を痛感。修行のため眼科コメディカルとして10年弱勤め、年間3500人以上の目のケアに携わる。認定眼鏡士SS級のプロとして現在は吉祥寺の眼鏡店(グラストリーイカラ https://www.g-ikara.jp/)で勤務し、2022年度から始まった国家資格「眼鏡作製技能士」の試験に合格した。自身の体験談を踏まえた色覚特性のブログが人気を博し、数多くの問い合わせや相談が寄せられている。
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(2023/01/06 05:00)
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